☆前編はコチラ
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諫山先生、推薦の2本めは……
『ナイトクローラー』
恐ろしく、おぞましい、
目を離すことができない怪作である。
主人公のルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)は、工事現場でフェンスをカットし、銅線として売るようなコソ泥である。
だが、銅線を売りつける相手(建設業者)に向かって臆面もなく「僕は勤勉で志は高く粘り強い人間だ。雇う気はないか」と尋ねたりする。もちろん相手は「コソ泥なんか雇う訳がない」と断る。もっともである。
そんなオープニングから、観客はこの主人公に対し、違和感を覚える。
この男はどこかおかしい。
その夜、ハイウェイでの交通事故に遭遇したルイスは、事故現場で被害者を救出する警察官を撮影する男を見かけ、尋ねる。「どこのTV局?」「(この映像を)高く買う局だよ」と答える男。彼はフリーのカメラマンで、この手の映像を撮ってはTV局に売っているらしい。
次の日の朝、ニュースでその映像が放映されているのを見たルイスは、高級自転車を盗み、それを売った金でカメラと無線傍受機を手に入れる。そして夜の街へ。
タイミングよくカージャックでの発砲事件を警察無線で傍受したルイスは、現場で臆すことなく血だらけの被害者をカメラに収める。
ここで観客は、早くも気づく。
この男、この仕事に向いている。
さっそく撮ったばかりの映像を手に、T V 局へ向かうルイス。
そこには野心家の女プロデューサーがおり、彼の映像を250ドルで買う。
この女プロデューサーは、こともなげに言う。
「犯罪ものが欲しい。郊外に忍び寄る都市犯罪よ。望ましいのは被害者が裕福な白人で、犯人は貧困者か少数派」。
そこからルイスは、陰惨な事件の映像を次々とモノにしていく。
だがある夜、彼はいい映像を撮るために、観客の予想通り、越えてはいけない一線を越える……。
ルイスに対する観客の違和感は、映画が進むにつれ、どんどん大きくなってゆく。
痩せた身体(演じたジェイク・ギレンホールはこの役のため、自ら進んで体重を落としたらしい)、ギラギラした目。
そこから決して満たされることのない巨大なエゴと、他者への無関心さが発散され、観る者をムカつかせる。
おぞましい映像を前に、思わずニンマリし、嬉々として浅ましい価格交渉に挑むルイス。
個性のまったく感じられない、妙に片付いた部屋で、たった1つだけある鉢植えに水をやる彼の姿は、
ホラー映画以上に恐ろしい。
なのに目を離すことができない!!
しかもラストシーンと言ったら……!!
後味の悪い映画はいろいろあるが、
この映画、その点では傑作と言っていい。
これから観ようという読者は、
心して観るように。
巨大な闇に飲み込まれないようご注意を。
(※この記事は別冊少年マガジン2017年7月号に収録されたものです)
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(終わり)