名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。今回の推薦者は『八乙女×2』の氏家卜全先生と、担当編集者の伊香さん。今まで紹介したことがなかった動物ものから、西部劇、伝説のヒーローアクションまで、ユニークな作品が揃いました! 編集部オススメの作品もおもしろいのでチェックしてみてね!
●TITLE『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』
孤独な青年の運命を変えた猫の物語
今回最初の推薦者は、表紙&巻頭カラーを飾った『八乙女×2』の氏家卜全先生! 1本目は『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』だ。
世の中には 〝犬派〟、〝猫派〟などと言って意見が分かれることも多い、人気のペットである犬と猫。映画界でも、彼らが主役になる作品は結構ある。犬の場合は『ハチ公物語』、『僕のワンダフル・ライフ』といったご主人様への忠誠心が感動を呼ぶものが多い。これに対して、猫はというと『長靴をはいた猫』や『ねこのガーフィールド』といったアニメ作品が多く(気まぐれな猫は実写の役者に向かない?)、登場する猫たちもかなり曲者である。
この映画に登場するボブという名の猫は、1人のストリートミュージシャンを破滅から救った偉い猫である。映画は実話であり、本人ならぬ本猫が出演している他の猫映画と違う感動猫映画なのだ!
ジェームズ・ボーエン(ルーク・トレッダウェイ)は、ストリートミュージシャンだ。大道芸人が多く活動するロンドンの観光地コベントガーデンで歌い、生活費を稼いでいる。と言っても、稼ぎはわずかでホームレス状態。しかもドラッグ問題も抱えており、人生崖っぷち。チップ入れに食べかけのサンドイッチを入れられても〝サンキュー〟というしかなく、ゴミ箱を漁る惨めな毎日である。それでもなんとか立ち直ろうと、麻薬中毒の更生プログラムに通っているのだが、苦しく孤独な生活に負け、麻薬につい手を出してしまう。ついには意識不明で病院に緊急搬送。
そんな彼の担当であるソーシャルワーカーのヴァルは、最後のチャンスとして彼に無償の住居を提供する。微かな希望が見えたその晩、ジェームズのアパートに1匹の茶トラの猫が迷い込む。一晩だけだぞとその猫を泊めてやるジェームズ。ところが次の日、その猫が怪我をしているのを発見。放っておけない彼は、その猫を飼うことに。隣に住む動物好きの女性ベティにボブと名付けられたその猫は、ジェームズの肩に乗り、彼が路上演奏をするコベントガーデンまでついて来るようになる。この様子に、人々が写真を撮らせてと集まってくる。歌を歌うジェームズの横にちょこんと座っているボブに、観光客は思わず微笑み、チップをはずんでくれる。
ボブが運んでくれた幸運を喜ぶジェームズだったが、彼と同じく麻薬中毒でホームレスの少年にお金を恵んだことから、少年はそのお金で買った麻薬で死んでしまう。そのうえ、通行人とのトラブルで、路上演奏を禁止されてしまうジェームズ。そんなジェームズを黙って見守るボブ。大きく丸い目が〝これでいいの?〟と尋ねている。果たしてジェームズは……。
猫と人間の、不思議で素敵な友情の物語だ。
▼編集部オススメ、もう1本!
『僕のワンダフル・ライフ』
猫の次は犬ということで。
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』
発売中
ブルーレイ:5170円(税込)
DVD:4180円(税込)
発売元:コムストック・グループ
販売元:ポニーキャニオン
© 2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
●TITLE『ボブという名の猫2 幸せのギフト』
一緒なら強くなれる
氏家先生推薦作2本目は、『ボブという名の猫2幸せのギフト』だ。先に紹介した『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の続編である。
1作目が、孤独な青年ジェームズが茶トラのボブと出会い、薬物依存やさまざまな問題を乗り越え、彼らの物語が本になるまでの話(『ボブという名のストリート・キャット』というタイトルで出版された)だとしたら、続編は通行人とのトラブルが原因で路上演奏を禁じられたジェームズが、〝ビッグイシュー〟という雑誌の販売でなんとか生活費を稼ごうとしていた頃に直面した、1人と1匹の最大のピンチを描いた作品だ。
さて、皆さんは『ビッグイシュー』という雑誌をご存知だろうか。日本でも路上で販売しているのを見かけるこの雑誌は、イギリスで誕生したホームレスに仕事と収入を与えて支援するために創刊されたストリート雑誌である。販売しているのを見かけると、自分も購入するのだが、著名人のインタビューや、社会問題に関する記事、ホームレスのおじさんの人生相談コーナーなんかもあって、面白いです。ちなみに前作の大ヒットで、雑誌の知名度は上がり、ボブも表紙を飾った。
ジェームズが書いた本『ボブという名のストリート・キャット』の成功で、出版社のクリスマスパーティに招待されたボブとジェームズ。だが、その気取った雰囲気に馴染めないジェームズは〝場違いだよね〟とボブに告げ早々に退散する。
帰宅途中、路上演奏の違反者として取り押さえられた若者を見かけたジェームズ。少し前の自分の境遇を思い出し、彼を助けることに。反抗的な態度の若者に〝話を聞いてくれ。説教はしない〟と、ジェームズは話し始める。それはボブとジェームズの貧しかった頃のクリスマスの物語。
路上生活から抜け出したものの、貧しさは変わらないボブとジェームズ。それでも近所でコンビニを営むムーディーや、慈善団体のビーの助けもあって、なんとか生活していた。
そんな時、態度が悪いことで有名な動物福祉担当職員に目をつけられてしまうジェームズ。このままだとボブから引き離されてしまう。不安を抱えたまま、毎日を過ごすジェームズに不運が重なる。彼が捨てた腐った鶏肉を食べて(これも理由あってのことなのだが)ボブが病気になってしまったのだ。お金もない自分は、ボブを飼う資格があるのか。ボブを動物福祉局に引き取ってもらった方がいいのではないか。悩むジェームズはある決心をするのだが……。
前作同様、まん丸な目をしたボブが愛らしい。人間不信に陥ったり、他人に対して不満や怒りを感じてしまった時に観たい1本。心が洗われます。
▼編集部オススメ、もう1本!
『マイ・ドッグ・スキップ』
こちらも実話。少年と犬の友情ものです。
『ボブという名の猫2 幸せのギフト』
発売中
ブルーレイ:5280円(税込)
DVD:4290円(税込)
発売元:株式会社コムストック・グループ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
© 2020 A Gift From Bob Production Ltd.All Rights Reserved.
●TITLE『クイック&デッド』
〝生者と死者〟どちらになるのか!?
今回2人目の推薦者は、『八乙女×2』の氏家卜全先生担当のベテラン編集者伊香さん。〝ムービーガイド〟2度目の登場だ。
推薦作1本目は『クイック&デッド』。映画通に人気のあるサム・ライミ監督(『スパイダーマン』シリーズ等)の西部劇。
さて皆さんこの『クイック&デッド』というタイトル。どういう意味だと思います?
原題は『THE QUICK and THE DEAD』。クイック=QUICKを西部劇ならではの早撃ち勝負のことだと思いませんでしたか? 伊香さんに聞いたところによると〝THE QUICK〟は英語の古語で〝生きている人〟という意味だそう。なのでタイトルの意味は〝生者と死者〟。いやあ、てっきり〝早撃ちで殺しちゃえ〟的なタイトルかと思ってたわ。さすがベテラン編集者、知識が豊富。勉強になりました。
寂れた田舎町リデンプションに女ガンマン、エレン(シャロン・ストーン)がやってくるところから物語が始まる。
リデンプションに君臨するのは十数年前に町の連邦保安官を殺して支配者となったジョン・へロッド(ジーン・ハックマン)である。
この日、町では早撃ち競技会の開催が宣言されていた。次々に参加を表明する荒くれ者のガンマンたち。そこにへロッドも現れ参加を表明する。息子であるキッド(レオナルド・ディカプリオ)が参加するにもかかわらず。
そしてもう1人連れてこられた男がいた。牧師のコート(ラッセル・クロウ)である。彼は昔へロッドの仲間だったが、改心し牧師となっていた。競技会への参加を拒否したコートは、絞首刑にされそうになるが、エレンの銃が彼を吊るした縄を撃ち抜く!
エレンも競技会への参加を表明。エレンは、連邦保安官の父を殺したへロッドに復讐するために町に戻ってきたのだった。翌日、時計台の長針に合わせて1対1で撃ち合う早撃ち競技会が始まる。果たして……!?
この映画の見どころはなんと言っても、俳優たちだ。主役の女ガンマン、エレンを演じたのは、『氷の微笑』の大胆な演技で一気に世界的スターとなったシャロン・ストーン。この人、めっちゃIQが高いらしく、噂ではアインシュタイン並みとか。
彼女の敵役へロッドを演じるのは名優ジーン・ハックマン。とにかく極悪非道。金より興奮を求める、一種のアドレナリンジャンキーを憎たらしく演じている。
へロッドの若き息子キッド役に、当時注目され始めたレオナルド・デカプリオ。今では若いモデル好きのおじさんだが、若い頃は本当に可愛かった。この頃はアイドルみたいだ。
コート役のラッセル・クロウ。地元オーストラリアでは有名な俳優でもアメリカでは無名だった彼をシャロン・ストーンが大抜擢!
旬を迎えた若手役者と名優のコラボ。しかも西部劇。楽しめます!!
▼編集部オススメ、もう1本!
『許されざる者』
こちらは名優たちが競演する西部劇。
『クイック&デッド』
発売中
ブルーレイ:4180円(税込)
発売・販売元: ポニーキャニオン
©1995 Tristar/JSB Productions,Inc.All rights Reserved.
●TITLE『マッドマックス2』
時代を超えたヒーローの誕生!!
伊香さん、推薦作2本目は『マッドマックス2』! いきなり2。〝1作目の『マッドマックス』はどうした〟とお聞きになる読者はいると思いますが……。
前作『マッドマックス』は、オーストラリア映画で、オーストラリアでは大ヒットしたものの、出演者の英語がオーストラリア訛りだったため、全米公開では、アメリカ英語に吹き替えられたらしい。それがダメだったのかは分からないが、全米での興行は大失敗。そこで続編であるこの映画を全米公開する時に、タイトルを『マッドマックス2』から『ロードウォリアー』に変更。それが大ヒットとなったのであった……って、この映画、アメリカでは続編という立ち位置ではなかったのだ。まあ話も現代から近未来の話になったし。ちなみに『マッドマックス』は日本では、撮影中にスタントマンの死亡者が出たという噂が立ち、大きな話題となって大ヒット。のちにその噂が間違いだったことが判明した。
舞台は文明が滅んだ世界。スピードと暴力だけの世界。そんな世界で暴走族はガソリンを血眼で求めていた。
そんな荒廃した世界で、犬を連れ、車を走らせる男がいた。マックス(メル・ギブソン)だ。
彼もガソリンを求め、暴走族らと戦う危険な日々を過ごしていた。
ある日、マックスは精油基地を守る一団と、暴走族の抗争に遭遇する。暴走族に襲われた精油基地のメンバーを助けたことから、ある提案を持ちかけられるのだが……。
ストーリーもキャラクターも漫画から抜け出してきたようだ。
レザーに身を包んだ男たち、もちろんレザーには鋲が打ってある。悪党どものヘアースタイルはモヒカン。その身を飾るのは鎖や毛皮、黒いマスクだ。暴走族のリーダーであるヒューマンガスは『13日の金曜日』のジェイソンが被っているようなホッケーマスク(鉄製)を被り、なぜか上半身裸、ボトムスはレザーの短パン姿だ!!
対する孤高のヒーロー、マックスは超がつくほどかっこいい!! 演じるメル・ギブソンは当時25歳!!
そしてこの作品の最も凄いのはアクションだ!! デジタル処理一切なし!(CGなかったし)この映画のスタントマンは本当に命懸けだったのではと思わずにはいられない!
時代を超えたヒーローを生み出し、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を生んだアクション映画の傑作。まだ観てない方、ぜひご覧ください。
▼編集部オススメ、もう1本!
『リーサル・ウェポン』
かっこいいメル・ギブソンをもう1本!
『マッドマックス2』
発売中
デジタル配信中
ブルーレイ:6980円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
© 1981 Kennedy Miller Entertainment Pty., Ltd.
© 1981 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
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