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【騙されたと思って1本!!】「別マガ」ムービーガイド 『RED RULE』貴島淳先生&『失語の拳』伊瀬賢先生が選んだムービー編

名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。今回の推薦者は「別マガ」4月号の新連載『RED RULE』の貴島淳先生と、同じく新連載『失語の拳』の伊瀬賢先生だ! なんと推薦作4本ともハリウッド映画じゃない! 映画も多様性の時代、いろいろ観ないとね。貴島先生も伊瀬先生もよく映画を観てらっしゃる!
編集部オススメの作品もおもしろいのでチェックしてみてね!

 

●TITLE『スターリングラード』
ドイツ兵が見た激戦地とは⁉

 今回、最初の推薦者は、新連載『RED RULE』の貴島淳先生。推薦作1本目は『スターリングラード(1993)』。
 歴史には戦争の激戦地として名を残した都市や地域があり、そこでの激烈な戦闘は、映画の題材にもなった。例えばベトナム戦争における南ベトナム937高地での戦いは『ハンバーガー・ヒル』(兵士が皆焼けた肉片になることから戦地がハンバーガー・ヒルと呼ばれた)、第二次世界大戦の硫黄島での戦いは『硫黄島からの手紙』(名匠クリント・イーストウッド監督作)という作品になっている。どちらも激戦地での兵士たちの過酷な運命を描いた戦争映画である。
 そしてこの『スターリングラード(1993)』も第二次世界大戦での激戦地となったスターリングラードに攻め入ったドイツ兵たちを描いた反戦スペクタル映画だ。
 カスピ海、コーカサス地方の油田を狙い、ドイツはパウルス将軍率いる第6軍をソ連へ向かわせた。
 ハンス・フォン・ヴィッツラント少尉率いる第2中隊第1小隊は、スターリングラード近郊の工場でソ連軍に包囲される。必死で応戦するが、そこはまるで地獄である。
 動くものはなんでも撃てと命令される兵士。ある兵士は混乱の中、味方まで撃ってしまう。しかも撃たれた同僚の兵士は死に際に“母さん、1人にしてごめん”と呟く。誤射した兵士はあまりのことに泣き叫ぶが、古参の兵士は言う“俺にも経験がある”。
 黒焦げになったソ連兵を殴り倒した兵士は呟く“漏らしちゃったよ”すると近くにいた兵士も“俺もだよ”。戦争とは生身の人間の殺し合いである。冷静でいられる人間などいない。
ドイツ軍、ソ連軍、共に多くの負傷者が戦場に横たわる。ヴィッツラント少尉は負傷兵を助けるため、小休戦をソ連軍に申し出る。白旗を掲げながら物陰から出ていくドイツ兵。相手のソ連兵も物陰から出てくる。見つめ合う両軍。このシーンは観るものに強い印象を残す。敵も同じ人間であることにお互いが気づくからだ。傷ついた仲間を救おうと必死な人間……。
 だが束の間の救助活動の時はすぐに終わってしまう。仲間を殺された兵士が怒りに駆られ小休戦の最中に発砲したからだ。
 負傷兵のために医者を連れてこようと下水道を伝って自軍に戻ったヴィッツラント少尉は、戦地から離脱したと理不尽にも囚人兵として生き残った兵士たちと共に、再び最前線へと送られる。そこは極寒の平原だ。
 上官の命令で民間人の家を焼き払い、捕虜の処刑を強いられる兵士は言う“皆、もう死んでいるんだ”。
 こんな歴史を積み重ねながら、今だに戦争をやり続ける人類とは。考えさせられる1本だ。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『地獄の黙示録』
こちらはベトナム戦争。描くのは戦争の狂気だ。

 

●TITLE『帰ってきたヒトラー』
ドイツのブラックコメディ!?

 貴島先生推薦作2本目は『帰ってきたヒトラー』。ドイツのコメディ映画である。それにしても貴島先生、推薦作が2本ともドイツ映画とは、もしかしてドイツ好き⁉︎
 さて、コメディ映画と一口にいっても、シチュエーションコメディ(シットコムって呼ばれるやつ)、スラップスティック(ドタバタって呼ばれるやつ)、ラブコメ、ブラックコメディといろいろ。『帰ってきたヒトラー』はもちろんブラックコメディである。なんせ歴史上一番有名な悪玉であるヒトラーが蘇る話なのだから。
 1945年、自殺直前のヒトラーがなぜか2014年のベルリンにタイムスリップ! 経費節減のためにクビになったTVマン、ザヴァツキに偶然見出され、コメディアンとして大ブレイク! というのがだいたいのお話。
 ドイツ人にとってヒトラー、ナチスは忌むべき存在である。ドイツではタクシーを呼ぶ時、日本のように手を挙げてはいけない。ナチス式敬礼を彷彿とさせるからという理由からだ。そんなドイツでよくこんな話を映画にしたもんだと感心してしまうが(原作は小説。ドイツでベストセラーになったらしい)、タブーを笑い飛ばして皮肉るのがブラックコメディである。
 TV局に復職しようとザヴァツキは、タイムスリップしたヒトラーを使った自主動画の撮影旅行を計画する。もちろん彼がヒトラーをコメディアンと思ってのことである。ヒトラーとザヴァツキの会話は全く嚙み合わないのだが、お互いの勝手な思い込みで話は進み、撮影旅行が始まる。
 時には金稼ぎのために似顔絵描きをするヒトラー。画家志望だったヒトラーが、美術学校の入試で落ちたのは有名な話である。
 行く先々で様々な人たちにインタビューするヒトラー。この妙な威厳と説得力に満ちたヒトラーのそっくりさん(本物だけど)はSNSで大バズり!!  世の中には無責任に面白がる人は多いのだ。その勢いで、ついにTV出演となるのだが……!?
 旅の途中、宿泊先の安ホテルのTVを見て“技術が進んだな。プロパガンダに最適だ”と感心するヒトラー。
 ザヴァツキから“なぜ、そんなヒゲを?”と聞かれると“戦争中ガスマスクに収まるようにした”と答えるヒトラー。
 よく考えるとけっこう怖い話でもある。そしてこの作品の結末も。このブラックコメディはどんな結末を迎えるのか。それは読者の皆さんでお確かめください。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『ジョジョ・ラビット』
ヒトラーを想像上の友人にした少年の成長物語。

 

『帰ってきたヒトラー』

発売中
DVD:1257円(税込)
発売・販売元:ギャガ
©2015 Mythos Film Produktions GmbH & Co. KG Constantin Film Produktion GmbH Claussen & Wöbke & Putz Filmproduktion GmbH

 

●TITLE『パラサイト 半地下の家族』
貧乏家族の逆転劇かと思ったら……!!

 今回2人目の推薦者は、同じく新連載『失語の拳』の伊瀬賢先生。推薦作1本目は韓国映画『パラサイト 半地下の家族』だ! 
 東京23区内の新築マンションの平均価格が1億円を突破したと言うニュースを聞いたが、お隣り韓国ソウルの不動産価格の高さはそれ以上らしい。あまりに高いので、貧困層はこの映画に登場するような半地下に住んでいる(最近ではこの半地下の住居すら家賃が高くて住めない人もいるようだ)。
 この作品はこの半地下に住むある家族の物語である。
 なぜかトイレが、リビング(といえるかどうかはわからないが)より高い位置にある。多分、低い位置だと汚水が逆流するためだろう。
酔っ払いが道でゲロを吐いたり立ちションしたりすると、それがちょうど頭上の明かり取り窓あたり。湿気が多くカビだらけ、大雨が降れば水没する半地下のアパートに暮らしているのはキム一家。ピザ屋の宅配用の箱を組み立てる内職で何とか生活している貧乏家族である。
 そんな一家にチャンスが訪れる。長男ギウの友人が裕福な家庭の子供の家庭教師のバイトを紹介してくれたのだ! 
 偽造した名門大学の入学証書を手に、ギウが向かったのは高級住宅地にある豪邸。有名な建築家が建てたもので、そこにはIT企業の社長一家、パク家が住んでいる。ギウは人のいい奥さんヨンギョを丸め込み、まんまと女子高生の娘ダヘの家庭教師に納まる。
 キム一家は貧乏だが経験値が高くチームワーク抜群。ギウがうまく家庭教師として入り込むと策略をめぐらし、妹のギジョンはパク家の幼い長男ダソンの美術教師として、父親のギテクはパク家の主人ドンイクの専属ドライバーとして、母親のチュンスクは家政婦としてパク家に入り込む。高収入の職を得て喜ぶキム一家。
 そんなある日、パク一家は長男ダソンの誕生日にキャンプに出かける。主人たちの留守中、豪邸で寛ぐキム一家。そこに彼らの策略で追い出された元家政婦がやってきて……。すると物語は、想像もつかない展開に!?
 貧富の差が生み出す笑いと悲しみ、そして恐怖の衝撃作だ。今までにも格差社会をテーマにした作品はあるが、この作品の衝撃度は圧倒的。さすがアカデミー賞作品賞、監督賞の受賞作である。
 貧乏なキム一家は、詐欺を働くいわば犯罪者だが、本当の意味で悪人ではない。家族仲は良いし、すぐ騙されるパク一家と彼らの豊かな生活について“金持ちは純粋で素直だ。子供もひねくれてない。金はシワをのばすアイロンだ。ひねくれたシワをピシッと伸ばす”などと褒める。自分たちの未来については“絶対失敗しない計画はなんだと思う? 無計画だ。無計画、ノープラン。なぜか。計画を立てると必ず人生その通りにいかない”と投げやりなことを言う。どんなに頑張っても自分たちに染み付いた半地下の匂いは消せない。そんな彼らが迎える結末は!?

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『万引き家族』
格差社会を描いた映画をもう1本。

 

『パラサイト 半地下の家族』

 

発売中
ブルーレイ:8580円(税込)
DVD:5280円(税込)
発売・販売元:バップ
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●TITLE『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』
架空のペルシャ語で生き延びた男の物語

 伊瀬先生推薦作2本目は『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』。ロシア・ドイツ・ベラルーシ製作の映画だ。
 この映画は、なんと架空のペルシャ語でナチス・ドイツの強制収容所を生き延びたユダヤ人の物語である。
 ナチスの親衛隊に捕まったユダヤ人青年のジルは移送される途中、サンドイッチとペルシャ語で書かれた希少な初版本を交換する。森に連れて行かれたジルたちユダヤ人は、容赦無く処刑されるが、ジルは自分がペルシャ人であると主張したため処刑を免れる。偶然にも大尉がペルシャ人を探していたためだ。ユダヤ人収容所に送られたジルは、大尉のもとに連れて行かれる。ジルが持っていたペルシャ語の本を眺めながら質問する大尉。ジルは自分の父はペルシャ人で母はベルギー人だと言い、読み書きはできないがペルシャ語は話すと架空のペルシャ語を披露する。大尉は終戦後にテヘランでレストランを開こうと考えおり、ペルシャ語を学ぶためペルシャ人を探していたのだ。
 1日に4語、1週間で24語、1か月で96語、1年で1152語、終戦までに2年かかるとして2000語は覚えられるだろうと言う大尉に、ペルシャ語を教えることになったジル。
 英語の日常会話が3000語で何とかなると言われているから、なるほど2年あれば外国語って習得できるのねなどと呑気なことを考えてしまうが、状況はナチスの強制収容所であり、死に直面しているユダヤ人である。
 想像してみよう。日本人であれば殺される状況で、中国人に成り済ます。生き延びるためには中国語を自分で創作し、その中国語を教えなければならない。タモリなら出来そうだが、普通ならまず出来ないだろう。問題はインチキ単語を作ることができても、それを正確に覚えられるかどうかだ。個人的には絶対無理な気がする。だが命がかかっているジルは必死だ。この緊張感は観る者にもひしひしと伝わる。そこらへんのスリラー映画の比ではない緊張感である。
 一方で、ジルと大尉の間には奇妙な関係が生まれる。ジルが創り出したペルシャ語を使いながら、記憶にない母親のこと、障害を持つ父親のこと、貧しかった家庭のことを語る大尉……。そんな大尉の言葉を注意深く聞くジル。
 そんな中でも戦況は移り変わる。ドイツの敗戦が迫ってくると、収容所内の厳しさも増していく。果たしてジルの運命は!?
 あり得ない設定ながら、リアルに迫ってくるヒューマンドラマ。観る価値ありの1本だ!

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『戦場のピアニスト』
こちらはナチスのホロコーストを生き延びたユダヤ系ピアニストの物語。

 

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