別冊少年マガジンで大人気連載中のコラム
『別マガ ムービーガイド』を大公開!!
週マガ編集部の映画担当が、漫画家さんや編集部員のオススメ映画を聞いて、それを紹介するコーナー!
今回は、2018年6月号に掲載されためいびい先生編をお届けします!
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名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。
紹介された映画が気に入ったら、オマケで編集部のオススメのもう1本もご覧くださ〜い!!
今回の推薦者は『かつて神だった獣たちへ』のめいびい先生だ。
ドラマチックな作風の先生が推薦する1本目は『夕陽のガンマン』。
なんとムービーガイド始まって以来の西部劇、マカロニ・ ウエスタンである。
マカロニ・ウエスタンというのは1960年代から1970年代にかけて作られたイタリア製西部劇のことで、アメリカやイギリスではスパゲッティ・ウエスタンと呼ぶらしい。
どっちにしてもイタリアと聞いて連想するのはパスタ的なものだったというオチなのだが、主演はあのクリント・イーストウッドである。
若い読者にとっては、大物映画監督(『アメリカン・スナイパー』等多数)。
中年以上だと、ハリー・ キャラハン(『ダーティハリー』シリーズの主人公、アウトロー刑事)。
男子映画マニアにとってはほとんど神様的なお人である。
そんなイーストウッドの役者としての出世作の1本(この作品の前に『荒野の用心棒』というヒット作あり)がこの『夕陽のガンマン』である。
インディオと呼ばれる極悪人率いる犯罪集団と、彼らを追う2人の賞金稼ぎの物語で、賞金稼ぎの1人が、モンコ(名無しの男という意味)と呼ばれるイーストウッドである。
いやあ、若い頃の彼は、ムチャクチャかっこいい!
ハンサムだし、スタイル抜群(背たかっ!)。
劇中ポンチョを着ているのだが、日本の小柄な男だと、てるてる坊主になってしまうところ、モデル並みの着こなしで、かっこいいのだ。もちろん銃の腕も抜群!
もう1人の賞金稼ぎは、これまた腕の立つモーティマー大佐である。演じるのはリー・ヴァン・クリーフ。西部劇の悪役として有名で、きつね顔と鋭い目が印象的な役者である。
さて、腕の立つ2人の賞金稼ぎだが、そうは言ってもインディオとその一味はなかなか手ごわいので、共闘することにする。
2人の賞金稼ぎが初めて向かい合うシーンがおもしろい。
お互いの靴をふみあって相手を値踏みし、お互いの帽子を撃って飛ばし合うことで銃の腕前を競い合う。よく考えるとまるで小学生のようだが、男なんてそんなもんである。
2人でインディオたちを全滅させるため(西部劇の賞金稼ぎは、犯罪者の死体をシェリフのところへ持って行き、賞金を手にするのだ)まず、モンコがうまいことインディオの仲間に入り、一味の情報をモーティマー大佐に知らせ、ここぞという時に一網打尽というわけだ。
インディオの仲間になるため、手土産として監獄にいる彼の親友を脱獄させ、インディオの元に連れて行くモンコ。
一方、インディオは州で一番大きなエルパソ銀行に狙いを定めていた。
見かけは山賊風だが、頭のキレる男で、銀行の壁を爆破し、金庫ごと引っ張り出すと言う手口で、大金を奪取。
あれ、これって『ワイルド・スピード MEGA MAX』じゃん。
元ネタはもしかしてこれ?
昔の名作を見直すと、こんな楽しい発見があるのだ。
さて、2人の賞金稼ぎは仲間割れせず、インディオ一味を全滅させ、賞金を手にすることができるのか!?
全編、男臭い映画で、画面に男たちの汚れて脂ぎった顔のアップがこれでもかというくらい映し出される。
その顔は、欲望、復讐、征服欲でギラギラしているのだが、その中に、男たちの優しさと悲しみがかすかに見え隠れする。
めいびい先生の描く獣たちのようだ。
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めいびい先生、2本目の推薦作は
『ザ・セル』。
セルとは監禁漕のことである。
いきなりな説明だが、 主人公の1人である連続殺人鬼は、女性を捕まえてはこのセルに閉じ込め、タイマーでその中に水を注ぎ、8時間で彼女たちを溺死させているのだ。
真っ白なドレスを着た美女が、馬を駆っている幻想的なシーンで映画は始まる。
彼女が馬を降りると、 なぜかその馬は像になっている。彼女の行く先には砂丘があり、彼女はその砂丘を越えて行く。
越えた先に、1人の少年が待っているのだが、彼は何かに怯え、彼女の言うことを聞かない。突然、顔がアザラシのようになり消えてしまう。
彼女は諦めた表情で、指の根元にあるスイッチを押す、すると……。
もう1人の主人公である彼女の名はキャサリン、特殊な医療施設で働く小児精神科医である。
そこで脳の傷害によって昏睡状態に陥った富豪の子供の治療を行っている。冒頭に出てきたアザラシの顔になった少年である。
彼女はセンターで開発された神経伝達装置を使い、少年の心の中に入っていたのだ。
この神経伝達装置というのが、なんともユニークで、説明するのが難しい。宙に浮いた寝た状態の筋肉模型とでも言えばいいか。(説明になってない?)
さて、連続殺人鬼はというと、飼っていたアルビノ(遺伝や突然変異により色素がない個体)の犬から足がつき、カール・スターガーと判明する。
警察が彼を逮捕に向かうのだが、本人は突然の脳の発作で昏睡状態に陥り、2度と目覚めない状態になってしまう。
しかも、まだ生きている女性をセルに閉じ込めたまま。
彼女が生きていられるのはあと半日もない。
だが監禁されている場所が分からない!
行き詰まった警察が頼ったのがキャサリンである。殺人鬼カールの心の中に入って彼から監禁場所を聞き出してほしいというのだ。
躊躇しながらも、引き受けるキャサリン。そして7人もの女性を餌食にしたカールの心の中へ入って行く……。
病んだ殺人鬼の精神世界は強烈で、残酷かつ幻想的だ。
犠牲者たちはおぞましい姿で作品として展示されている。まるで悪魔の展覧会である。
だがそこには、実の父親から酷い仕打ちを受け続けた少年カールも住んでいる。
彼女はその少年から、セルのありかを聞こうとするのだが……!?
殺人鬼の心の中は、まるで神話、中世の宗教画、そしてモダンアートのようだ。キャサリンを捉えようとするカールは絢爛豪華な衣装を纏った魔王のようである。
ちなみにこの衣装を担当したのは石岡瑛子。
1970年代の超おしゃれだったパルコのCMは、彼女の作品で、1993年には『ドラキュラ』(F・コッポラ監督)の衣装でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したお方である。
人は誰しも心の中に秘密を持っているものだが、それを覗こうとする者には覚悟が必要だ。美しいのか、それともおぞましいのか、覗いてみないとわからないのだから。
(※この記事は別冊少年マガジン2018年6月号に収録されたものです)
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▼『かつて神だった獣たちへ』第1話
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(終わり)