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面白い漫画には、狂気とリアリティが詰まっている! 『はっちぽっちぱんち』原作・カツラギゲンキ先生×漫画・嵯峨あき先生対談インタビュー

マガポケで大好評連載中の新感覚格闘漫画『はっちぽっちぱんち』。
物静かで心優しい女子高生・黒岩希歩が、心の底に眠っていた「人を殴りたい」という暴力欲求を解放させ、女子格闘技の世界に飛び込む、新感覚格闘漫画です!

 

今回は、原作のカツラギゲンキ先生と、漫画の嵯峨あき先生に特別インタビューを実施! 『はっちぽっちぱんち』誕生秘話から、女子格闘技への熱い想いまで、たっぷり語っていただきました。

 

●カツラギゲンキ先生と嵯峨先生の原点は……?

──カツラギ先生と嵯峨先生が漫画家を目指したきっかけを教えてください。

 

カツラギゲンキ先生(以下、カツラギ):
漫画を描き始めたきっかけは、学生時代に読んだ『バクマン。』でした。少年2人が原作担当と作画担当で役割分担して漫画家を目指す物語で。僕は原作担当のキャラと同じく作文が得意だったこともあり、「作画してくれる人とタッグを組めば僕も漫画家になれるんだ!」と衝撃を受けたんです。読んですぐ、ノートに物語を書いて、美術部の絵が上手な女の子に作画してもらいました。この原体験があったので、大人になって自分の将来を考えたときに、「やっぱり漫画を描こう」と決意できたのだと思います。

 

嵯峨あき先生(以下、嵯峨):
僕は、逆にきっかけというものがなくて。物心がついた頃には、「自分は将来漫画家になる」と思っていました。子どもの頃から漫画に触れる機会がたくさんあったので、好きな絵を模写して、気がつけば自分でも描くようになりました。漫画家以外の将来は想像すらしていなかったですね。

 

カツラギ:
そうなんですね! 僕は両親が教育熱心で、漫画のない環境で育ちました。漫画を読むには、学校で友達から「週刊少年ジャンプ」や「月刊コロコロコミック」を貸してもらうしかなくて。子どもの頃はずっと漫画に飢えていましたね(笑)。

 

──漫画をあまり読めない環境の中で、漫画への想いを膨らませていったのですね。

 

カツラギ:
幼い頃に抑圧された欲望の反動で、大人になってから「漫画を描きたい」と思ったのかもしれません。ただ、漫画は禁止されていたのですが、大友克洋先生の『童夢』だけは「文学」として扱われていたようで、自宅の本棚にありました。家で読める唯一の漫画だったので、何度も何度も繰り返し読みましたね。そういう意味で、一番影響を受けたのは大友克洋先生です。

 

──嵯峨先生が影響を受けた作品はありますか?

 

嵯峨:
手塚治虫先生の作品や、『HUNTER×HUNTER』『七つの大罪』など、たくさんあるのですが、絵で影響を受けたのは鳥山明先生の作品ですね。鳥山先生の絵は立体的なので、ひたすら模写することで自然と空間認知能力を鍛えられた気がします。

 

カツラギ:
バトルアクションを描いている漫画家さんで、鳥山先生の作品を通っていない人っていない気がしますよね!

 

●連載が決まらない日々の末に生まれた、渾身の一作

──本作が誕生した経緯について教えてください。

 

カツラギ:
以前から、格闘技を題材とした漫画を描きたいと思っていました。でも、本当に自分が描きたい題材は週刊連載に慣れてから出した方がいいと思い、アイデアを温めていたんです。その間、ラブコメを描いていましたが、連載会議で落ち続けて……。「やっぱり描きたいものをぶつけるしかない!」と思って出したのが、本作でした。なので、『はっちぽっちぱんち』の最初のネームには、僕の怨念というか、それまでのフラストレーションが詰まっていたと思います(笑)。 

 

――カツラギ先生は、もともと格闘技がお好きだったのでしょうか?

 

カツラギ:
そうですね。僕自身も、格闘技をやっていました。ですが、怪我で辞めてしまって……。しばらくは、トラウマで格闘技の世界から離れていました。それでもやっぱり、憧れは消えないんですよね。きっかけは覚えていないですが、6~7年前から、また格闘技の試合を見に行くようになりました。

 

――その頃から、女子格闘技にも興味があったのですか?

 

カツラギ:
いえ、実は、以前の僕は女子格闘技に興味を持てずにいて……。本作でも描いているように、女子格闘技は、男子に比べてパンチの音が小さく、ダウンもKOもない。だから、女子の試合が始まると席を立ってしまう人も多いんです。僕も、失礼ながら、試合を観戦したこともあまりありませんでした。

 

――そこから、女子格闘技の物語を描こうと決めたきっかけは何だったのでしょうか?

 

カツラギ:
希歩ちゃんの名前の由来にもなっている、女子格闘家・Kiho選手との出会いです。まずその可愛らしさに見惚れた後、観客もまばらな会場で必死に殴り合っている姿にくぎ付けになって。そこから、「どうして彼女は格闘技の世界に入ったのだろう?」と妄想が止まらなくなったんです。すごく漫画的な妄想なのですが(笑)、「あの子はきっと人を殴りたくてしょうがないに違いない!」と思って生まれたのが、本作の主人公・黒岩希歩でした。

 

●女子格闘技の魅力は、戦うことへの“純粋さ”!?

──嵯峨先生は、本作の執筆前から格闘技に関心があったのでしょうか?

 

嵯峨:
男子格闘技は大好きなのですが、女子格闘技は、本作に関わるまで見たことがありませんでした。というのも、女性が殴られる姿を直視できなかったんですよね。でも、本作を描くにあたって女子格闘技を見始めたら、それまで抱いていたイメージが大きく変わりました。みんな楽しそうだし、純粋に戦うのが好きなんだな、と。

 

──「楽しそう」というところに、純粋な衝動を感じますね。

 

嵯峨:
僕は殴ったり殴られたりした経験がないので、実体験としてはわからないのですが、おそらく人を殴ることに原始的な快楽がある気がします。それはもちろん男性だけではなくて、女性にも。

 

カツラギ:
たしかに、みんな純粋に格闘技を楽しんでいるように見えますよね。男の子に比べると、女の子の方が喧嘩や殴り合いに縁のない人が多いはずなんです。昔は、男の子が喧嘩をして帰ってきても「よく戦った」と褒める親もいたくらいですが、女の子が喧嘩して血まみれで家に帰ってきたら、結構びっくりされますよね。

 

──たしかに、喧嘩をすると心配される立場の女性が「格闘技」を選び取るのはなぜか、気になりますね。

 

カツラギ:
想像ですが、女の子の方が暴力についてタブー視されている分、その内に秘めているものもあるのかな、と思っています。男性選手は、優勝すれば富と名声を手に入れられるし、「強さ」があれば女性にモテたりもする。リングに上がることで優位に立てる側面があります。けれど、女性選手は、男性選手に比べると知名度だって高くないですし、ファイトマネーもまだまだ少ないのが現状です。それでもリングに上がるのはなぜか。そのモチベ―ションに「狂気」があるのでは、と想像しちゃうんですよね。

 

嵯峨:
ある意味、衝動がピュアな感じがしますね。

 

●同じ熱量を持った2人の「描きたい!」が巡りあう

──嵯峨先生が漫画を担当されるに至った経緯を教えてください。

 

カツラギ:
連載会議でネームが通ってから、作画していただける漫画家さんを探していました。半年ほど経った頃、担当編集さんが嵯峨先生を紹介してくださったんです。

 

嵯峨:
僕が本作のお話をいただいたのは、すごく運命的な巡りあわせでした。それまでアシスタントの仕事をしていたのですが、関わっていた作品の連載が終わってしまったのを機に、マガジン編集部に持ち込みすることにしたんです。それが、本作のお話をいただく1か月前でした。

 

──持ち込みされた作品は、どのような内容のものでしたか?

 

嵯峨:
偶然にも、女の子が戦うアクション漫画でした。それで、今の担当編集さんの目にとまったようです。実は、持ち込みしたとき、「もしこれでダメだったら漫画家の道を考え直すしかない」と思っていて。そこで声をかけていただいたから、「これはもう誰かが描けって言ってるんだろうな」と運命を感じました。

 

──マガジン編集部に持ち込みしたのには、理由があったのでしょうか?

 

嵯峨:
いろいろな方から「絵柄がマガジンっぽい」と言われていたので、マガジン編集部さんへの持ち込みは最後の切札でした。持ち込むのは本当に勇気が要りましたが、その覚悟の甲斐あって本作のお話をいただけて、嬉しかったです。

 

──初めてカツラギ先生のネームをご覧になった際の印象はいかがでしたか?

 

嵯峨:
「こんな漫画は見たことがない」と思いました。面白い漫画には狂気とリアリティが必要だと考えているのですが、『はっちぽっちぱんち』にはその両方がありました。

 

──カツラギ先生は、嵯峨先生の漫画をご覧になっていかがでしたか?

 

カツラギ:
最初、ポイントとなるアクションシーンを数枚描いていただきたいとお願いしたのですが、いきなりほぼ全ページが送られてきて驚きました! 技術的な素晴らしさはもちろんですが、その原稿に込められた熱量に感動しましたね。僕にとって本作は初連載ですし、気合いが入っていたので、僕と同じ熱量と温度感で作品に向き合ってくれる嵯峨先生にぜひお願いしたいと思いました。

 

嵯峨:
「面白い!」「これを描きたい!」と止まらなくなり、気づいたら1話分まるっと作画していただけなんです(笑)。ただ、今振り返ると、その段階では作品の全体像や今後の展開までは理解できていなかったので、熱量だけが詰まった原稿だったなと反省しています(笑)。

 

●可愛くて強いヒロインたち! 先生たちのイチ推しキャラは・・・・・・?

──お気に入りのエピソードやシーンを教えてください。


カツラギ:
第8話「執念」での、関西出身のREINAチルドレン・小林愛理と希歩ちゃんの試合です。愛理があえて希歩ちゃんに一発顔面を殴らせるのですが、そのときの希歩ちゃんの恍惚とした表情は印象的でしたね! 嵯峨先生の絵ならではだと思いました。

 

嵯峨:
ありがとうございます! 僕は、第13話「優しい子」ですね。試合のエピソードが続いた後、希歩ちゃんが家に帰ってお母さんと過ごす日常シーンなのですが、希歩ちゃんに感情移入して泣きそうになりながら作画していました。この作品は激しい狂気だけでなく、繊細な心の揺れ動きも描くんだ、と新たな発見もありました。

 

──希歩ちゃんの感情の揺れにグッとくる名シーンでした。希歩ちゃんの他にも、魅力的な選手が登場しますが、注目してほしい推しキャラクターはいますか?

 

カツラギ:
一番思い入れがあるのは、先ほども紹介した小林愛理です。愛理のモデルになっている、RISE QUEENミニフライ級王者の小林愛理奈選手とも交流があるので、大切なキャラクターの一人ですね。キャラクターの設定も小林選手に寄せています。

 

──キャラクターのビジュアルも魅力的ですが、キャラクターデザインはどのように決めているのでしょうか?


嵯峨:
カツラギ先生がベースを作られて、それをもとに僕が描いています。最初の頃は、こちらからも違う提案をした方がいいのかなと思っていたのですが、作品全体を理解するにつれて、カツラギ先生がキャラクターのあるべき姿を考えてデザインされていることに気づきました。

 

カツラギ:
一人ひとりの内面やバックボーンを踏まえた上で、キャラクターデザインを設定しています。例えば、希歩ちゃんはシンプルなおかっぱ頭ですよね。それは、希歩ちゃんが脚の不自由なお母さんと二人暮らしで、おそらく生活保護を受けている世帯の子だから。希歩ちゃんの性格を考えれば、おしゃれな美容院に行くのではなく、1000円カットとかで髪を切るはずなんです。服も高価なものは着ないでしょう。こうした僕のデザインイメージを伝えて、嵯峨先生にブラッシュアップしてもらっています。

 

──嵯峨先生が本作を描く際、意識していることはありますか?

 

嵯峨:
基本的にはカツラギ先生のネームに従うようにしています。やはり、そこに本作の答えがあると思うので。あえて僕の解釈で変える必要はないと思っています。

 

カツラギ:
大きいコマはネームの意図を汲んでもらうことが多いのですが、それ以外のちょっとした表情などは、嵯峨先生の色が出ていてとても好きです。特に、第8話で希歩ちゃんが殴ることを「お預け」されている表情は、「妖怪じみている」と僕の周囲でも評判でした(笑)。

 

嵯峨:
ありがとうございます! ネームをいただいて最初に感じるのは、カツラギ先生のネームの絵を超えなくてはいけないというプレッシャーです。それができないと、ネームをそのまま掲載すれば済む話ですし、僕が作画をする意味がないですからね。ただ、ネームの絵がとても魅力的で、僕が描くとかえってレベルダウンしないか悩むこともあって……。模写することもありますし、日々、試行錯誤ですね。

 

カツラギ:
僕のネームが嵯峨先生の絵になって戻ってくるたび、感動していますよ! スライムがキングスライムになった感じです(笑)。

 

▲カツラギ先生のネーム

 

●読者からのコメントは、今の時代のファンレター!

──第1巻が発売されてから、周囲の反響はいかがですか?

 

カツラギ:
単行本の発売直前に僕のX(旧Twitter)のアカウントが凍結されてしまう事件もありましたが(笑)、ありがたいことに、いろいろなところから反響をいただいています。友人からも感想をもらいますし、よく行く飲み屋さんにも単行本を置いていただけて嬉しいです。

 

嵯峨:
それはありがたいですね! 僕は普段、自宅で黙々と作業していることが多くて、あまり直接的な反応はまだ感じられていないのですが、近所の本屋に置いてあるのを見かけると嬉しくなります。

 

カツラギ:
マガポケのコメントも目を通しています。その中で得られる気づきもあって、もっと楽しんでもらうにはどうしたらいいか、うまく伝えるために良い方法はないか、考えさせられますね。

 

嵯峨:
コメントは今の時代のファンレターですね!

 

●ラスボス・希歩ちゃんと、巻き込まれる選手たちに注目!

──今後の展開や注目ポイントについて教えてください。

 

カツラギ:
注目してほしいのは、希歩ちゃんの今後ですね。希歩ちゃんは技術面で格闘家として成長していくけれど、狂気的な部分は変わらないんじゃないかな? 実際に描き進めてみないとわかりませんが、どのようにして成長していくのか見てほしいです!

 

──希歩ちゃんが持つ衝動についても、詳しく描かれる日がくるのでしょうか?

 

カツラギ:
はい、狂気の根源も明らかになる予定です。この漫画のラスボスは希歩ちゃんであり、希歩ちゃんの狂気の中に他のキャラクターたちがどんどん投げ込まれていくイメージで描いています。新しいキャラクターもたくさん登場する予定ですので、楽しみにしていてください!

 

──希歩ちゃんの他に、今後の注目キャラをひとり挙げるとしたら……?

 

カツラギ:
ムエタイ選手のラブちゃんですね。ネタバレにならない程度にお話しすると、ラブちゃんは選手の中で一番過酷な運命をたどる子です。一番苦しい思いをするからこそ、一番可愛くしたいと思っていて。嵯峨先生にも、「ラブちゃんは一番可愛く描いてください!」とお願いしています。もし、キャラクターの人気投票があったら、希歩ちゃんを差し置いて1位になるくらいの勢いでつくっているので、楽しみにしていてください!

 

──嵯峨先生は、今後の展開で楽しみにしてほしいところはありますか?

 

嵯峨:
僕も読者の皆さんと同じく、今後の展開を純粋に楽しみにしています(笑)!この漫画はカツラギ先生の「これを描きたい!」という想いがたくさん詰まっているんです。漫画家としての純粋な衝動があって、そこが気持ちいい。だからこそ、読んでいる人は心からこの漫画を楽しめるのだろうなと思います。

 

──マガポケ作品のなかで、気になっているものはありますか?

 

カツラギ:
『阿武ノーマル』は、希歩ちゃんとは別ベクトルの狂気を抱えた女性を描いているので、注目しています。映像化されたら面白そうだなと期待しちゃいますね。

 

嵯峨:
僕はやっぱり絵を見てしまうのですが、『私をセンターにすると誓いますか?』の若月ジュン先生の絵は、非常に洗練されていて素晴らしいですね。清潔感があって、無駄な線がなくて完璧だな、と。目指す方向が同じ作家さんだと勝手に思っています(笑)。

 

──それでは最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

 

嵯峨:
多くの方に『はっちぽっちぱんち』を楽しんでいただけて、とても嬉しいです。いただいたコメントは勉強になりますし、いつも僕が作品について教えてもらっています。漫画家としてこれからどんどん成長してまいりますので、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです!

 

カツラギ:
この漫画は、僕が本当に面白いと感じたことを描いています。今は動画配信サービスなどで女子格闘技を気軽に見られるので、この漫画で女子格闘技に興味を持った方はぜひ一度見てください。そして、ハマった方は実際に会場にも足を運んでみてほしいです! 作品をより楽しんでいただけると思います。ただ、最後に一つだけ、読者の皆さんにお伝えしたいことが! 本作で扱っているのは総合格闘技ではなく、立技格闘技です。そちらをご承知の上で、これからも作品を楽しんでいただけますと幸いです!

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●『はっちぽっちぱんち』第1巻、大好評発売中!

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