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【スーパー人生相談企画】『爆音伝説カブラギ』原作者・佐木飛朗斗先生の「楽譜の無い道」第1回を大公開!!

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『特攻の拓』、『爆音伝説カブラギ』、『[R-16]R』などの原作者である佐木飛朗斗先生。『爆音伝説カブラギ』の単行本16~19巻に収録された、佐木飛朗斗先生が送る特別人生相談企画 「楽譜の無い道」全6回をマガポケで大公開しちゃいます!
今回は、第1回をお届け! ”強い生き物“に成ろうとする少年たちを描いてきた先生が、読者の悩みに応えます!!

 

キミが 特攻 ぶっこ めッ! 悩みを 特攻 ぶっこ めッ!!
■「楽譜の無い道」第1回

 作家・原作家である佐木飛朗斗先生のスーパー人生相談企画がついに始動! 『特攻の拓』から『爆音伝説カブラギ』、『[R-16]R』まで。“強い生き物”に成ろうとする少年たちを描いてきた先生が、読者の皆様の悩みに真摯に応えるぜッ!!

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◎撮影/東直輝

【初出】
マガジンSPECIAL 2015年No.12
[2015年11月20日(金)発売号]掲載

 

今回のお悩み:夜になると不安で眠れません!

 

この頃、夜ふとんに入ると、将来に対する漠然とした不安が襲ってきて、全然眠れません! というのもボクには夢らしい夢がないんです。「こんな風になりたい」「こんなことがしたい」ということが思いつかないんです。何か得意なことがあるわけでもないし、勉強もフツー。今は学生だからいいけど、こんなんで社会に出られるのか超不安です。この不安をなくすにはどうすればいいんでしょうか?

カカシ 18歳・男

佐木飛朗斗先生:

不安で眠れない、それも将来に対する漠然とした不安でというのは、とても辛いですね。まず、この漠然とした不安について考えてみました。

「夢らしい夢が無く、未知の自分に対する理想や欲求が無い」との事ですが、カカシさんの18歳という年齢を考えると、それほど心配する事は無いと感じます。
確かに、小学生の頃から夢や目標を持って人生を生きる人達は存在しますし、例えばスポーツ界や音楽界(特にクラシック)などは、この最たる世界だと思います。

私自身は14歳の頃、「物書きに成るか、音楽の世界で生きていく!」と決めていましたが、それは自分が20歳まで生きる事は無いだろうという、まったく根拠の無い予感の為でした。
つまり焦っていた訳です(笑)。
1962年生まれの私は今、2015年で53歳となりました(笑)。
人は、思ったよりも長く生きるものです。
今にして思えば、「20歳まで生きる事は無いだろう」と感じたのは、単に大人になった己自身を想像する事が出来なかっただけと感じています。
ただの想像力不足ですね(笑)。

10代というのは、「飛躍的な夢想」や「現実に対する想像力の欠如」が交錯するものだと思います。 
カカシさんの漠然とした不安は、「自分の事がよくわからない」という事ではないでしょうか?
けれども私は、よく言われる「自分探し」や「本当の自分」という言葉を決して推奨しません。
自分を解析する事は可能ですが、探す事は出来ないと感じますし、今在る自分こそが、本当の自分であると思います。
それよりも18歳のカカシさんに必要なのは、もっと「人間を識り、そして学ぶ」という事だと感じます。

莫大な情報量が超速で流通してゆく21世紀ですが、人間の世界は人間が動かしています。
社会へ出れば、様々な年齢、経験、感性、知識、思考、環境を持った人々と会う機会が持てますが、学生であれば、やはり書物が良いでしょう。
様々なキャラクターや、それを描く書き手への共感が「人間を識り、学ぶ」事への近道です。

人を識れば己を知る。
己を知れば、少なくとも「漠然とした不安」は無くなるのではと推察します。
それに私が奨める本や音楽が、もしカカシさんにとって退屈な物であったなら、ぜひ夜眠る前にベッドの中で読み、聴いてみて下さい。きっと心地よく眠れますよ?(笑)
未来を焦らず、己を知り、興味と探究心を楽しめる様になればと願っています。

 

「18歳のカカシさんに必要なのは、もっと「人間を識り、そして学ぶ」という事だと感じます。」

 

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◎イラスト/東直輝

 

■佐木飛朗斗 今月の 音葉 おとは 言楽 げんがく

●『魔の山』上・下

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※書影は上巻

 

トーマス・マン 著
◎岩波文庫 赤433-6 赤433-7

 

タイトルから想像出来る様な冒険小説でも無ければ、SF物でもありません。“魔の山”とは、スイス高原のサナトリウム及びその周辺を指しています。あるいは人生そのものの比喩でしょうか? 主人公はこの療養所で様々な人々や思想に出会います。生と病と死が蔓延する隔絶世界に、善と悪、陽と陰、愛と憎悪等、様々な事象が対位法的に描かれ、感得するものが多く、個人的には人間と人生を学ぶトップレヴェルの書物です。もちろん、暗く陰惨な物語ではありません。独特のユーモアが全編に溢れています。もし、読み通す事ができなくても、20代、30代、40代と年齢を重ねてから再挑戦することをお奨めします。また読了してから、各世代ごとに再読するに十全に値すると確信する一冊(上下2冊ですが‥)です。

 

●リスト:ピアノ独奏作品全集Vol.39
『巡礼の年第1年 スイス』
レスリー・ハワード(ピアノ)

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フランツ・リスト(1811─1886)
◎CDA67026 hyperion
Liszt:The complete music for solo piano, 
Vol. 39–Première année de pèlerinage

 

ピアノの魔人と謳われた大作曲家フランツ・リストの曲集です。彼が、スイスやイタリアを旅しながら書いたとされる楽曲で、この一枚は、文字通り、スイスの山や湖畔、谷や泉が目に浮かぶ名曲揃いです。特に「オーベルマンの谷(Vallée d’Obermann)」は個人的にも大好きな曲です。美しい自然や風景をテーマとしている為、リスト独特の「人の恐怖を呼び覚ます」ような楽曲は無く、『魔の山』のバックグラウンドに、また安眠の友としても最適でしょう。ピアノはレスリー・ハワード。私の知る限り世界で唯一リストのピアノ曲全曲を録音した名手です。もし、入手困難であれば、もちろん他のピアニストの録音も存在します。

 

 

次回の「楽譜の無い道」もお楽しみに!

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