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『デスラバ』に秘められた工夫の数々 智弘カイ先生インタビュー

『デスラバ』に秘められた工夫の数々 智弘カイ先生インタビュー
男子vs女子! 美女が”男子”たちの貞操を狙ううらやまけしからんサスペンス漫画『デスラバ』。カズタカ先生の原作を、智弘カイ先生が漫画にしています。

 

今回は智弘先生に漫画家の道を歩むきっかけや『デスラバ』に詰め込まれた数々のテクニックをうかがいました。

「落書き程度しかやってませんでした」

ーー智弘先生が漫画家を目指したきっかけは?

 

智弘先生:
就活に失敗したことです(笑)。
当時、特に「やりたい」と思うこともなかった。でも、漫画は好きだったんですよ。だから「じゃあ漫画をやってみるか!」と絵を描き始めたんです。

 

ーーそれまでにも漫画を描いていたんですか?

 

智弘先生:
教科書やノートの隅に落書きをしていた程度でした。
描いてみて、同人即売会に出していたら声をかけられて、商業誌デビューという感じでした。
※智弘カイ先生は成年誌出身

 

ーー『デスラバ』で苦労している点、工夫している点を教えてください。

 

智弘先生:
登場人物が服を着ていないシーンが多いので、それが大変ですね。一般的にも人体を描くのは難しいと言われますが、服を着ていないと誤魔化しが効かないのでなおさら。

 

あと、裸だと画面が保たない。
トーンもベタも減って、白が多くて画面が締まらなくなってくるんです。

 

ーーその対処方法は?

 

智弘先生:
光源には気を遣っていますね。スタッフさんにも細かく指示を出して、コマの中で重くしていい場所を決めて、そこに影を落とす。

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こっち側は白くていいけど、こっち側は重くしてメリハリをつける。

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映画のテクニックに「視線を持っていきたい場所の左右を暗く、重くしていく」というものもあります。このシーンも左側を重くしています。

 

智弘先生:
『デスラバ』はセリフが多い作品なのですが、話者を丁寧に追いすぎると顔のアップばかりの漫画になってしまう。この漫画にもっとも求められているものは、かわいい、セクシーな女の子の絵だと思うのでそこにジレンマを感じますね(笑)。

 

その都度、読者にストレスを与えないようにいろいろな工夫をしますがどうしても長いセリフが必要なシーンでは、脈絡のないサービスカットを挿入することもあります(笑)。

 

ーースリリングな印象のあらすじと違って、実際読んでみると、楽しくて読みやすいのはその心がけのおかげだったんですね。

 

智弘先生:
物語の展開上、どうしても人が死んでしまうなどのシーンは出てくるので、バランスを考えないで描いていると極端に重く暗くなっていってしまいます。

 

それでも読みやすさを維持するには、全体のテイストをある程度コントロールする必要があるのかなと思っています。

 

ーーキャラクターデザインなどで気を遣っていることはありますか?

 

智弘先生:
逆説的ですが、キャラデザにとらわれ過ぎないこと、ですかね。
例えば、「正面から見てこの形になるんだから、横から見るとこうなる」ということにはこだわらない。

 

イラストと違って、漫画の場合、重要なのは正確さや整合性じゃなくて、そのシーン・その評定のキャラクターのかわいさだと思うので、「このアングルで可愛く見せるにはどう描けばいいか」ということを考えています。

 

ーーなるほど。でも、アングルによってキャラクターの顔が違う、とは全然感じませんでした。どうしてでしょう。

 

智弘先生:
キャラクターごとにアイコンをつけるようにしているからだと思います。メガネやリボンといった、キャラクターにとって印象的な部分はなるべく画角に入れるようにしています。

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「ギャグは半々ぐらいで考えています」

ーー『デスラバ』には本当にくだらなくて笑えるギャグがたくさん入っていますが、原作者のカズタカ先生と智弘先生どちらのアイデアなんでしょうか?

 

智弘先生:
カズタカ先生が考えてくれて文字原作の段階で入っているものと、僕がネームを描く段階で追加するもの、半々くらいじゃないでしょうか。

 

カズタカ先生からは1巻分とか数巻分くらいの結構まとまった量の原作を一気にいただくんです。なので、実際にネームにしてみると、案外膨らんじゃったり、おとなしい展開が続いてしまったり、ということがあるので、そこに僕がギャグやエロを足して、自分なりの漫画のテンポにさせてもらっているという感じですね。

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多くの読者も「知らんわ(笑)」とツッコんだであろう「寄らば抜く」。カズタカ先生の原作を読んで、智弘先生も笑ってしまったそうです。


ーー思い出深いギャグシーンはありますか?

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智弘先生:
僕が考えたギャグで担当さんが気に入ってくれたのは、「さやかちゃんの乳首」のシーンですかね(笑)

 

一旦消えたかと思われたメインヒロインのさやかちゃんが再登場するんですが、性格も見た目も一新していて別人のようになっている。「でもやっぱりさやかちゃんだ!」と、主人公の藤代が確信するシーンです。

 

原作ではたしか、感情を失ったように見えたさやかちゃんが、ふと涙を流すことで、藤代がさやかだと気づく、というストレートに感動的な演出でした。それを偶然見えてしまったさやかちゃんの乳首から「このちょっと陥没した乳首は……間違いない!」と確信するってシーンにしてしまいました(笑)。

 

最初にさやかちゃんの乳首を描いたときに、ちょっと特徴的に描いていたからできたシーンでした。

 

けど、マガポケだとその部分は黒塗りになっているので、あんまり意味がなかったと思います(笑)。まあ、単行本で読んでくれた方はわかる、ということで。

 

ーーキャラクターデザインについて、カズタカ先生から修正が入ることは?

 

智弘先生:
たまにありますけど、だいたい男性キャラです。女性キャラはぜんぜんなくて、「え、こだわるのそっちなの?」って(笑)

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ーーセクシーなシーンだけでなく、恋愛描写も多い作品です。

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「え?ラブコメ?」と思わせるシーン。山本さわに恋をしてしまったのは……?

 

智弘先生:
エロは求められている要素の”ひとつ”だけど、エロだけだと読者に飽きられてしまう。だから、「かわいい」も盛りこみたい。

 

裸なんだけど清純派、みたいなギャップとか。『デスラバ』って結構、そういう恥じらいも入れているんです。

 

「ベタなラブコメっぽさ」は半分真剣半分ギャグというか、読者の読み方次第で、ラブコメとしてドキドキも楽しめるし、「なんでこいつら、この状況でラブコメしてんの?」って笑うこともできるかな、と。

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連携してオ○ニーを達成! 喜ぶ藤代と伊良部。でも、藤代は数分前までオ○ニーしてたよね……右利きだよね(出典:「寄らば抜く」)

 

ーーそういった工夫が、デスラバの読みやすさを生み出してるんですね。
ちなみに智弘先生が気になっている「マガポケ」オリジナル作品は?

 

智弘先生:
BOKU先生の『放課後の拷問少女』です。

 

BOKU先生はすごい。音楽で言えばプログレッシブポップ。
どんな読者でも気軽に読める内容なんですが、超絶的な技術と知識を感じさせられる。「好き」と「うらやましい」が入り交じった気持ちで読んでます。

 

――最後に読者にひと言いただけますか?

 

智弘先生:
そうですね。

 

今日、いろいろ話させてもらったんですけど、あまり難しく考えずに『デスラバ』を楽しんでもらえたら嬉しいです!

 

――ありがとうございました!

 

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