別冊少年マガジンで連載中の
別マガ ムービーガイドを特別に大公開!!
週マガ編集部の映画担当が、漫画家さんや編集部員のオススメ映画を聞いて、それを紹介するコーナー!
今回は、2017年6月号に掲載された編集部員のオツ編をお届けします!
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名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。
紹介された映画が気に入ったら、オマケで編集部のオススメのもう1本もご覧くださ〜い!!
今月の映画を選んでくれた1人目の編集者は別冊少年マガジン副チーフのオツだ。見かけはチャラ男で、中身は……ま、どうでもいいか。
最近、バリバリの茶髪だったのを、黒髪に染め直し、どういう心境の変化かと思ったら、彼の場合、髪を染めるのは単なる白髪隠しだったと判明。それなりに苦労している副チーフなのである。
さてそんな彼が選んだ1本目は、大根仁監督のインディーズ映画『恋の渦』である。
この映画、9人の若い男女が織り成す青春群像劇である。
というのは嘘で(いや、まったくの嘘ってわけじゃないんだけど)
〝マジで〜〟
〝うっせ~よ〟
〝意味分かんねえ〟
〝あり得ね〜〟
〝ムリだから〟
〝別にいいけど〟
〝ダイジョブなんで〟
でほぼ会話が成り立つ、
軽さ爆発、浮つき度100%の男女の話である。
同棲中のカップル、コウジとトモコの部屋に集まった男女9人。
内訳は、コウジの弟のナオキと同棲中の彼女サトミ、コウジの友達ユウタと彼のアパートに居候中のタカシ、同じくコウジの友達オサム、そしてトモコの友人のユウコとカオリだ。
え〜、覚えられない〜という読者の方々、大丈夫、おおざっぱに男5人、女4人だと思えばけっこう。
彼らは彼女のいないオサムに、女の子を紹介するために集まっている。
オサムに紹介する女の子ユウコは、トモコに言わせれば、かわいくて性格がいい、篠田麻里子似な子である。
ここで男子には注意が必要だ。女友達が友人を紹介してくれるという場合、女友達のいう事を信じてはいけない。
女は、決して自分より美人を紹介してくれないからだ。
現れたユウコは、まあ、当然というか
〝しのまり〟から1万光年離れた女の子
なんである。
結果、この会は盛り上がらずお開きになる。
そして、ここからこの映画のエンジンがかかる!!
オサムはユウコをお持ち帰りし(仲間があんなブス紹介してゴメンという電話に〝おお〟と言うオサムが笑える)、
タカシはカオリに告白、OKもらったと喜ぶが、
実はカオリはナオキとセフレ関係(良い子の読者は読み飛ばすように)で、
そんなナオキの浮気を疑うサトミ。
コウジはユウタと脱法ハーブにうつつをぬかし、
タカシはなかなか会ってくれないカオリに電話をし続けると、
まさに〝渦〟状態!!
観客は、都内のそれほど上等でないワンルームマンションに隠しカメラを仕掛けて、そこで生活する若い男女を覗いている気分になってくる。
これぞインディーズ映画!!
大手の映画会社ではこれは絶対作れない!!
それにしても男たちの情けなさ加減が悲しくも愛おしい。
彼女に文句ばかり言って虚勢を張る男。
浮気するくせに、浮気相手から〝彼女だって浮気してるかもよ〟と言われると心配になる男。
ブスの彼女を隠そうとする男。
女に簡単に騙される男。
ホルモンに支配されている彼らが言いたいのは一言だけである。
〝おっぱい触ってもいい?〟
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オツ2本目は『天国と地獄』。
世界の黒澤明監督のサスペンス。
アメリカ人作家エド・マクベイン(警察小説の〝87分署〟シリーズが有名)の『キングの身代金』にインスパイアされた、メジャー中のメジャー作品である。
1963年公開。
オツに言わせると、新人漫画家にストーリーのなんたるかを説明するのに、この映画はとても役に立つらしい。
主人公の権藤金吾(三船敏郎)は大企業ナショナル・シューズの常務である。高台の豪邸に住でいるが、実は叩き上げの苦労人で、仕事一筋の男である。
その権藤に何者かから電話がかかってくる。〝子供を誘拐した。身代金3000万円 を払え〟というのだ。
当時、誘拐身代金の相場(!?)は20万から30万、多くて200万円の時代、3000万とは途方もない金額だ。
ところが、誘拐された子供は権藤の息子ではなく、息子と一緒に遊んでいた権藤家の運転手の子供だと分かる。だが、誘拐犯はその事実を知っても、権藤に金を要求する。
その時、権藤の手元には5000万円の小切手があった。自社株を買うため、自分の夢を実現させるため、自宅を抵当にしてまで集めた金である。
しかもこの金を失えば、彼が築いてきたものすべてが崩壊するという、いわば命より大切な金である。
だが、自分のために幼い子供の命を犠牲にしていいのか。
誘拐の知らせを受け、秘密裡に権藤家にやってきた刑事たちも、さすがに身代金を払えとは言えない。子供の親である運転手も金の事情を知ると、がっくりとうなだれるだけである。だが、そこは権藤、身代金を払う決意をする!!
権藤役の三船敏郎が素晴らしい!!
あの時代にバスローブが似合う男はこの人しかいない!!(劇中、着てみせる)
スピルバーグやルーカスが自分の映画に使いたがったのも無理はない。
権藤を裏切った秘書に〝お前はガキだ。まだお前という人間になっておらん!!〟と叱りつける様子に、ああ、男の威厳て、こういうのを言うんだと、思わず感心してしまう。
ここから映画がドキドキのサスペンスになってくる。
身代金受け渡し、犯人逃走!!
まるでその場にいるような心臓バクバクの臨場感!!
知能犯にまんまと身代金を奪われたものの、
担当刑事(仲代達矢 クールでありながら犯人逮捕に燃える刑事を好演!)は
〝犬になってもホシを追うんだ〟
と仲間を叱咤激励し、地道な捜査を進めていく。
防犯カメラも、コンピュータも、グーグルもない時代、録音された犯人の声、子供の記憶、聞き込み、犯行に使われ乗り捨てられた車から、一人の男が浮かび上がってくる。
とにかく捜査する刑事たちの様子がリアル。
クーラーもない部屋で汗をかきながら捜査会議をする彼らを見ていると、こちらまで息苦しくなってくるほどだ。
そして、いよいよ犯人逮捕へ!!
権藤さん、あんたはクーラーの効いた天国にいるが、こっちは地獄の窯の中なんでね、犯人のキャラもこの名作に相応しく強烈である。
(※この記事は別冊少年マガジン2017年6月号に収録されたものです)
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(終わり)