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「少年マンガの編集者」はどんな学生だった?週刊少年マガジンで聞いてきた

はじめまして。

編集者のお仕事に興味をもった、大学3年生の高野りょーすけと申します。

  

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週刊少年マガジンを出版する「講談社」に来ました。

 

子どもの頃から好きなマンガや最近気になるマンガ、皆さんもそれぞれあるかと思います。

 

ですが実際のところ、マンガ家さんと二人三脚でやられている「編集者」さんがどんな人生を歩まれているのか……あまりピンと来ないのでは?

 

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かくいう僕も、昨日10時間ほどかけてジャンプの「バクマン。」を読み返し、おもしろさと感動に震えたのですが、「編集者さんはどんな学生だったんだろう…編集者さんのことをもっと知りたい…!」と思うようになりました。

 

やっぱり、マンガへの愛は尋常じゃなかったんでしょうか?

 

 

 

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そんなわけで今回は、週刊少年マガジンの編集者さんを訪問し、どんな学生時代を過ごされてきたのかお聞きしたいと思います。

 

「バクマン。」を出版してる集英社さんじゃないのは、マガジンが運営しているアプリ「マガジンポケット」の宣伝も兼ねてるからです。

 

 

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井上さん(24歳)

今年の春に早稲田大学を卒業し、講談社に入社。

週刊少年マガジンへ配属され、現在「炎炎ノ消防隊」などを担当。

 

 

 

 

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お忙しい中ありがとうございます。

さっそくですが、昔からマンガがお好きだったんですか?

 

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そうですね。毎日読んでましたし小説も大好きでした。高校生の時に出版社に入ろうと思って、どうせならたくさんの出版社がある東京の大学に行こうと

 

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読むのがお好きなら、自分でマンガ家や小説家になろうとは思わなかったんですか?

 

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高校生のとき自分で小説を書いたことがありましたが、ゴミのようなものができてしまって心が折れました

 

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ゴミ? どんな小説を?

 

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宗教関係のSFですね。キリストの聖杯伝説と遺体の場所を交えて300ページぐらい書いたのですが、かなりひどいものができあがってしまって。読んでみたらめちゃくちゃでSF的な考証が雑になってるし、兄に見せたら「書くの辞めたら?」と言われちゃったんです

 

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なんだか難しそうな内容ですね。300ページ書くだけでも大変そう

 

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はい。最終的に気づいたのは、自分で書いた小説じゃなくてほかの人が書いたものを読みたいなと。作家になりたいわけじゃなかったんですね

 

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その小説は今読めないんですか?

 

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田んぼで燃やしたので、もうありません

 

 

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もう、ありません

 

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大学生になってからはどんな学生生活を? 恋に遊びに大忙しなイメージがありますけれど

 

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すごく地味でしたね。恋愛なんてすることなく、本を書きたい学生を集めて出版社にプレゼンしに行く編集者の真似事みたいなサークルに入ってたんですけど、結局、自分の中で中途半端になっていて。出版社からOKがでれば本にしてもらえるのですが、出版したらそこで終わりというか

 

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出版したあとの「売る」意識がなかったと?

 

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はい。本は出たら売らないといけないのに、出版社に渡った段階でみんな仕事が終わった感じがあって。これじゃおもしろくないと思いやりたいことやろうと考えたんですね。それで団体のお金と名前を職権乱用して、お話を聞きたい出版界の方のトークイベントをやったりしていました

 

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なるほど…。大学生活は地味だったとおっしゃっていましたが、とても真面目そうですし、出版のサークルで活躍されていたのでしたら、就職活動で出版社を受けたとき楽勝だったんじゃないですか?

 

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楽勝ではないですが、正直に思っていることを話していました。第1志望は小説、第2志望はマンガにして面接を受けに行ったら、講談社の面接で好きなマンガ・嫌いなマンガを聞かれて

 

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よくあるやつですね。…嫌いなマンガは何を?

 

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『●●●●●』です

 

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…それって、御社の作品だったような

 

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…えっとですね、『●●●●●』はもともと好きでずっと読んでて、■■■■■が■■■■■■■■■■しながら■■■■■■■■■■■■して■■■■■■していくマンガだと思っていたんですね.。ですが一時期、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■して、それ以降の展開が■■■■■■■■■■なように感じていたんです…。それで、嫌いなマンガを聞かれたとき口からとっさに出てしまったんですよ。…面接官には笑われました

 

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…作品名はぼかしておきます。…好きなマンガを聞かれたときは、なにを答えたんですか?

 

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『BLUE GIANT』です

 

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…他社の作品(小学館)ですね

 

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主人公がひたすらサックスを演奏しているそばで、周りのおっちゃんたちの視点が丁寧に描かれているんですけど、これがまたすごいおもしろくて。本気で没頭している主人公を横から見た人物が、自分の人生に影響を受けていくということを毎話毎話やるんですよ。僕、マンガってこれぐらい読んでる人に元気与えられたならいいなあと思っていて。ある意味で僕にとっては理想のマンガのひとつというか

 

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…なるほど。好きな作品もそうではない作品も、「どこがおもしろいのか」「どこが疑問なのか」をきっちり言語化されていらっしゃっていてやっぱりスゴいですね…。普通に読んでるだけだと、あーおもしろかったで終わっちゃいますけど

 

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自分なりのおもしろさの軸を持ちたいので、どこがなぜおもしろいのかをちゃんと言葉にするよう心がけています

 

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面接ではマンガ以外に小説も聞かれると思うんですけど、どうされていたんですか?

 

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えっと、「正直言ってここの小説はほとんど好きじゃないです」というのを、一次面接から最終面接までぜんぶ最初に言ってました

 

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これってひょっとすると…正直とかじゃなく…イヤな男子のような?

 

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「SFは●●●社の作品が好きで読んでるけど最近つまらないから、講談社で自由にSFをやらせてほしいです」とも言ってました。なぜか面接をどんどん通過するのでめちゃくちゃ嬉しかった反面、「この会社はどうかしてるのかな」と思っていて…

 

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好きな作品に、マガジンの作品をあげることはなかったんですか?

 

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最終面接ではあげました。社長が直々に面接するので、毎週読んでいた週マガで1番読んでいるものを言おうと、「『ドメスティックな彼女』はキャラがとにかくエロいし可愛いので大好きです」と

 

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…考察が『BLUE GIANT』より雑に思いますが、やっぱり正直な方なんですね

 

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…それで、入社して2ヶ月の研修を経てから配属先が決まるんですけど、一人ひとり別室に呼ばれて個別に発表されるんですね。そのあと控室に戻ってきて自分の配属先を伝えて、周りの同期が「おおー」と盛り上がるんです。僕は面接の時からずっと小説志望で出していたのに、発表された配属先は「週刊少年マガジン」だったんですよ

 

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第1志望ではなかったと。それでも、週刊少年マガジンといえば講談社の顔、同期の方からしたらかなり羨ましいと思いますけど

 

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もちろん嬉しかったのですが、事前に配属を予想されていた意味不明なくらい優秀な同期がほかにいたんですよ。それなのに小説志望の僕を入れたから、なんでなんだろうなあって。マガジン編集部に来てからは、新人のマンガ家さんと打ち合わせしたり大久保篤先生の『炎炎ノ消防隊』にサブ担当として入ってたりして、想像していたよりずっと日々楽しいんですけどね

 

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田んぼで小説を燃やした井上さんが『炎炎ノ消防隊』とは、奇遇のような

 

 

 

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大久保先生はアナログ作画の方なのですが、B4サイズの生の原稿を見れると「おわぁ…」って声が出ます。漫画で読んだ時も当然カッコいいんですが、初めて生でみた時のインパクトは凄まじいものでした

 

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少年マンガの編集者になるにはどうすればいいのでしょうか? もう少しで就職活動でして、有利な情報をお聞きできないかと思いまして

 

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そうでしたか。

偉そうなこと言えないですけど……正直に本音で話すことじゃないでしょうか

これは職場の先輩からの受け売りなのですが、編集者は作家とずっと歩んでいく人付き合いがメインの仕事なので、猫を被っても見抜かれちゃうんですよね。面接でも、自分の過去の失敗を取り繕わずに素で話したほうがいいのかなと。本音で話したからこそ、ほかの出版社にボコボコに落ちた僕を講談社が拾ってくれたと思っているので

 

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ありがとうございます…。

井上さんも、大学生のときに大きな失敗したんですか?

 

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教授を殴っちゃいました

 

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やばくないですか?

 

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はたいたのかな。

酔っ払っている途中に小説の話になって、僕と教授の考えが食い違ったんですよ。教授の考えは深いし正しいと思うのですが、話してたものが僕の大好きなSF作品だったので譲れなくなってしまいました。教授が酔った勢いで「なんでわかんねえんだよ!」とグラスをガンッとやったので、「うるせえんだよ!」ってパンと殴ったら教授もやり返してきて

 

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好きな作品でそこまでモメるって凄いですね。編集者はあきらめよ

 

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次の日その教授の授業に行ったら、「また飲もうな」と言われて無事に仲直りしましたけどね。結局あれから飲みに行けてないですが…

 

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かなり乱暴に言えば、大好きな作品を通してつながるってことなんでしょうか。

モメたのはどの作品で?

 

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映画化されて話題になっていた、伊藤計劃さんの『ハーモニー』です

 

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すごい名作だと思いますが、これも他社の作品なんですね

 

 

 

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…ということで、編集者の井上さんに学生時代を振り返っていただきました。

 

自分で書いた小説を燃やす、大学で教授とバトルする、面接で講談社の作品について本音を話す…

どれも作品への深い愛からというのが印象深かったです。

 

今回お話いただいた井上さんがご担当の『炎炎ノ消防隊』、そしてほかのマガジン作品も読める「マガポケ」をチェックされてみてはいかがでしょうか。巷で話題の、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』も連載中です。

 

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同じく、井上さんがご担当のマガポケ新連載『マグナムリリィ』も11月19日(日)に公開されるとのことです。

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▼『マグナムリリィ』も、WEBでも読める!

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ライター:高野りょーすけ

   (https://twitter.com/tonbonline

 

(終わり)