ねとらぼ等でコラムを連載しているにゃるら(@nyalra)と申します。
今回はマガポケベースから「(筋金入りのオタクだし当然)スクラン好きだったよね? じゃあ記事お願いします」と頼まれました。
実際に当時『スクールランブル』(以下、スクラン)に夢中だったのは間違いないですし、言われてみると当時のオタク少年たちにとって、どれだけスクランが偉大な存在だったか語りたい気持ちもあり、こうして記事を書く運びとなりました。
さて、『スクールランブル』は00年代ラブコメ漫画を代表する少年漫画です。
当時のマガジンの勢いが凄まじかった事や、夕方台に放送されたアニメの大ヒットもあり、当時の学生ならオタクでなくとも知っているレベルで一時代を築いた作品。ご多分に漏れず僕も読者の一人でありました。
スクランを購入しながら「『ネギま!』よりはオタクっぽくないから」という謎の言い訳が自分の中であったのですが、実際は当時から両作とも大好きでした。
是非、昨今の小中学生も、美少女ラブコメに手を出す自分と葛藤して欲しい。
このアニメの完成度が非常に高く、原作の空気感の再現に豪華声優パワーやラジオも全てが完璧。原作の持ち味の一つである柱コメントを、アニメでも活かしていた点に、一番感動した覚えがあります。
ED主題歌にまさかの小倉優子が起用され、あまりに予想外な組み合わせに読者は困惑しましたが、個人的にはあの全てがふわふわした歌詞に、感情が全くこもっていない歌声が合わさった独特な味が大好きです。PVでの天満ちゃんのコスプレもかわいい。
■二大ヒロイン、沢近愛理・塚本八雲
本作の大きな魅力といえば、少女漫画のようにすれ違い続けていく恋愛模様にあります。
1巻の頃からは想像もつかない程、複雑に絡みあっていく関係性に毎回ハラハラさせられました。その所為もあり、多くの面倒くさい「カプ厨」(特定のカップリングに拘るオタクたち)なる存在が生み出されてしまいます。
特に主人公である播磨拳児を中心とした沢近派・八雲派の争いは激しく、当時のインターネットではこの二大派閥の間で日夜相手を殺さんばかりに議論が展開されていた程。
時代が時代なら、どちらに属するにせよ、反対勢力から暗殺されていてもおかしくはなかったでしょう。
今回は本編の内容を順に追いながら、多くのオタク少年たちを虜にしたスクラン二大ヒロインの魅力を振り返っていきましょう。
■沢近愛理
(1巻81P)
彼女の初登場自体は#7からなのですが、大きく扱われたのは#10から。初めは天満のライバルキャラとして設定されていただけあり、播磨よりは烏丸くんとの会話が多めでした。
登場時点から恋愛や容姿への意識の高さを見せつけ、王道の金髪ツインテールらしいお嬢様キャラを存分に発揮。この恋愛への拘りが終盤で光りますので、覚えておいて下さい。
(2巻76P)
播磨との初接近は#23から。チャラ目の男子生徒の告白を断った沢近が、独り雨に濡れらえれて帰るところを、偶然通りかかった播磨が傘へ入れてあげる王道ラブコメ回。鋭い目つきから伝わる感情の揺らぎが沢近らしく可愛らしい。
この回まで播磨が天満ちゃん以外の女生徒と近づく描写が少なかったため、この意外な展開に初心な小中学生たちはドキドキです。
(3巻27P)
更に沢近との関係性は進み、#34では播磨が天満ちゃんと間違えて沢近へ告白してしまいます。
「ヤベェ」とシンプルに焦る播磨に対し、胸を抑えて「私を?」「どういうこと?」と思考がこんがらがっている沢近という、両者の焦りの対比が最高です。
ここで重要なポイントなのが、沢近が#23話で何気なく訊いた「カレー」の単語を連想してること。この乙女らしさに、もう読者のオタクたちはイチコロ。ここから沢近の長い恋の戦いが始まっていく。
■塚本八雲
(4巻144P)
姉の天満ちゃんと違い、静かで儚げな魅力を持つ少女。能登麻美子さんを声優に起用したのはナイスキャスティング。
「自分に好意を寄せる男性の心の声が聴こえてしまう」設定や、天真爛漫な姉を陰から支えつつ、実は自分も姉に依存しているというお手本のような姉妹の関係性も素晴らしく、何度読み返してもオタクが必ず恋してしまう名ヒロインです。
動物に優しく好かれやすい播磨に興味を示し、手製のおにぎりを差し入れするシーンが二人の初接近でした。
(5巻78P)
八雲が明確に播磨と関わるようになるのが#67。
偶然バイト先で、播磨が秘密裏に執筆している恋愛漫画を読んでしまい、成り行きで意見を述べる読者として信頼される事に。
二人だけの秘密の共有が始まります。当然のようにメイド服なのがあざとく、多くのオタクの道を踏み外させた貫禄が漂う。
(5巻85P)
それから校内でも、漫画の打ち合わせとして何度も二人きりで会うことに。紛らわしい会話で周囲を誤解させつつも、不思議な密会が続いていきます。
柱コメントによると、この時点で八雲は播磨の友人ランク1位にまで格上げ。意外すぎる形で播磨のラブコメ関係の中心へ。いつしか漫画のアシスタントまで務める事となり、播磨のパートナーとしてどんどん信頼され始めていく。
■二大ヒロイン、衝突
(6巻93P)
しばらく八雲の優勢が続くも、体育祭では沢近のターンに。
体育祭途中のリレーで脚を挫いてしまい、クラスから離れたところで落ち込む沢近。そこに沢近に借りがある播磨がジャージを被せて、颯爽と勝利を約束する主人公らしさ全開のシーン。
(6巻125P)
約束通り優勝をもたらした代わりにハゲを披露した播磨を、沢近の方から踊りに誘うなんとも青春らしい回。
最後のコマの「ねえヒゲ……アンタ踊るのヘタね」が、沢近らしくとても好きなセリフです。
(7巻22P)
慣れない手つきながらも播磨のジャージを縫い直してあげた沢近。しかし、播磨の原稿を取りに来た八雲が気を利かせてジャージを縫い直してしまう。
柱コメントの「──姉さん、大変です…。」が非常に良い味だしています。流石、単行本で柱コメントを追加するだけはある作品。
八雲と播磨が知り合いであり、既にただならぬ関係であることを知る沢近。八雲がジャージを縫ったのは親切心からなのか、はたまた恋心からなのか掴めず、複雑な心境のまま帰っていきます。
こうして二大ヒロインの初衝突は静かに終わりました。
ここでは体育祭で一気に播磨に近づいたと思ったものの、新たな邪魔者(八雲)の出現に困惑した沢近の判定負けといったところでしょうか。
(7巻81P)
漫画の執筆という秘密を明かせないため、どんどんあらぬ誤解をされ続ける播磨と八雲。沢近ですら、この二人がつき合っていると認識し始めます。
つき合っていると誤解されつつも、どこかイヤではない八雲。二人の秘密は続き、このままでは沢近が完全な劣勢になるという所で、「この人……姉さんに似ていませんか?」と漫画のモデルが姉であると指摘。播磨の恋心が自分でなく姉にあることを察してしまいます。
それはとして、播磨の原稿の締め切りが近づいているため、八雲は播磨の家へ泊まって作業することを決意。どんどん八雲のターンが続きます。
■二大ヒロイン、衝突(その2)
(10巻53P)
極めつけは#123の文化祭。
劇という形で姫となった播磨を取り合うことになった二人。
「あなたが知らない百年という時を共に過ごしてきたのです…」と、初めて沢近へ強く出た八雲。沢近の知らない漫画執筆という秘密を武器に応戦。沢近に勝利した八雲は、(フリながらも)播磨へキスしようとまでします。
恋のライバルを前に、攻め攻めとなった八雲の姿にオタクたちはもうメロメロです。
(10巻71P)
二人が本当につき合っているのか確かめるため、八雲をダンスに誘う沢近。
体育祭では播磨と踊ったダンスを今度は恋敵がお相手という印象的な場面。「あんたとヒゲって本当ににつきあってるの?」「つきあっては…いません…」という二人の会話での「つきあって”は”」部分が重要。
当時は、この後も三角関係が激化していく事を期待して読んでいたのですが、今ではこの二人の美少女による百合百合しい展開もアリに思えますね。どちらのカプ厨も納得せざるを得ない最適解ではないでしょうか。
■三角関係、決着
(16巻51P)
このままだと八雲ルート確定な訳ですが、そうそう上手く進まないのがラブコメです。文化祭以降は沢近のターンとなり、「結婚式の阻止」や「二人でクラスのアルバム作り」など、どんどん沢近・播磨の仲が進展していきます。
印象的な回は#196。序盤の出会いを彷彿させる相合傘。こういうシーンでの沢近の鋭い目つきはとても美人です。
(17巻59P)
恋心を自覚し、自ら播磨と接近するため強引な行動に出る沢近。
更に嫉妬から友人である天満ちゃんと喧嘩したり、その所為で八雲からビンタされたりと、恋愛のために色々と衝突が起き始めますが、一歩も引かずに播磨の傍に居続けます。
(21巻52~53P)
長らく続いた三角関係も佳境へ。動いたのは八雲です。
いつまでも鈍感な播磨に対し、八雲側から告白に近い言動を行いました。しかし、この男にはあっさりと「誤解」されてしまいます。
この返答のお陰で、八雲ははっきりと播磨から自分へ向いた恋心はないのだと納得することが出来ました。
(22巻54P~55P)
八雲とは(八雲側の一方的ながら)一旦の決着がついたものの、播磨は天満ちゃんに失恋したショックで落ちこぼれに。そんな彼に手を差し伸ばしたのは沢近でした。
それからスクランらしいなんやかんやがあって、播磨は沢近の婚約者となりつつ、原稿のため天満ちゃん不在の塚本家で八雲と暮らすことに。
ほぼ沢近が優勢という状況ながら、本編では三角関係がまだまだ続いていくエンドとなりました。物語は外伝へと続きます。
■スクランZ
(スクールランブルZ 92P/99P)
本編後のスクランZでは、素直になった沢近がグイグイ攻めていく姿が見れます。この2ページのためだけでも、本編を読破して良かったと心から思えるかわいさ。
(スクランZ 146P)
それ以上に重要なのは、八雲による沢近評。
播磨を「神様でも勝てないくらい頑固者」とした上で、それに負けないくらいの恋愛の頑固者に沢近を挙げ、「女の私から見ても格好いいもの…」と実質敗北を認めます。
沢近が勝利した理由として、彼女が「播磨以上に恋愛に頑固だった」ことが挙げられます。本編#10から度々重ねられてきた沢近の恋愛観への拘りが実を結ぶんですね。
スクランZ自体が正史かパラレルかで議論されたりしたこともありましたが、個人的にはスクランZも含めた締め方が一番美しいと思います。
(編集部注:『スクールランブルZ』は電子未配信です。)
■それから
久しぶりに、2016年、2017年とマガジン本誌へスクランが掲載されました。
数年後の同窓会を描いた短編で、そこでも沢近と播磨の関係がはっきりとしないままでしたが、高校在学時よりも確かに距離が近づいた二人が見れただけでも感激です。
という訳で、スクールランブルから確かに時代を築いた二人のヒロインの魅力を語った記事でした。
どこまでも献身的で頼れるパートナー止まりだった八雲と、何度も挫折や誤解をしつつも頑固に恋愛を貫いた沢近。
本編では沢近寄りで終わりつつも、読者側からはどちらも捨てがたい魅力があります。今でもどちらか選べと言われると真剣に悩む方も少なく無いでしょう。
因みに、僕がどちらが好きだったかという話ですが…………
(15巻140~141P)
天満ちゃんの不在時での塚本家へのお泊りで、突然本編一の百合百合しさを見せたサラちゃんです。
将来やりたい職業を訊かれ「八雲の結婚式の仲人さん!」と元気いっぱいに答える笑顔が眩しい。
彼女も最終的に塚本家で八雲と暮らすことになるので、そういった視点で見ると一番の勝者なのでは。
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