今回は、「週マガ」40号に掲載されたマガジン連載中の漫画家先生へのインタビュー企画「漫画家への花道」第1弾を大公開! 第1弾では、『EDENS ZERO』の真島ヒロ先生が新人漫画家の悩みを解決! さらに、真島先生にお答えいただいたものの、惜しくも本誌に収まりきらなかった内容をマガポケベースで大公開しちゃいます!
〜漫画家を目指すキミに贈る〜
漫画家への花道
【第107回新人漫画賞締め切り直前特別企画第1弾!!】
『EDENS ZERO』真島ヒロ先生が新人漫画家の悩みを解決!
連載までの距離がグッと縮まる実用アドバイス!!
第107回新人漫画賞の締め切り目前! 「週マガ」40号から3号にわたってマガジン連載中の漫画家先生へのインタビュー企画をお届けいたします! 新人漫画賞を受賞し、現在連載を目指して日々努力をされている新人漫画家さんから質問を募りました。今回はそんな新人漫画家さんたちが抱える悩みを『EDENS ZERO』の真島ヒロ先生にぶつけてみました!
1998年『MAGICIAN』で第60回新人漫画賞入選を受賞。同年にデビューを果たす。その後『RAVE』や『FAIRY TAIL』などの連載を経て、現在は週刊少年マガジンで『EDENS ZERO』を連載中。
●連載前の準備に正解はない
――これから新人漫画家さんより預かっている質問をお伝えしますので、ご回答をお願いします!
真島先生:
はい、よろしくお願いします!
新人漫画家からの質問①
これまでの連載作において、連載前に構想やキャラクターはどの程度まで考えていましたか?
真島先生:
『RAVE』の時は、結構ガチガチに決めていましたね。物語の展開も、登場キャラクター全員の辿る運命も。最初の連載ということもあって、プロになる前に考えてた妄想とかが全部作品に反映されたんだと思います。『FAIRY TAIL』は対照的に、ほぼ何も決まっていなかったです。主人公と仲間たちのキャラだけが決まって始まり、あの世界の設定や、各キャラクターの過去のエピソードなどは物語を創りながら決めていった感じですかね。『EDENS ZERO』に関しては、半々です。『RAVE』の時のように決まっている部分もあるし、『FAIRY TAIL』の時のライブ感も大切に描いている感じですかね。ガッツリ作り込んである展開や設定も、今後描くのが楽しみです。
▲『RAVE』のレット。当初は敵として登場するが、後に仲間になる。これは最初から決まっていた設定で予定通りの展開だった。
●先輩に勝つために連載を休まず続けた
新人漫画家からの質問②
真島先生と言えば、「無休載」だと思います! 連載を休まず続けるための秘訣などはありますか?
(真島先生はプロ歴22年間で休載なし)
真島先生:
僕は本来は不真面目な性格で、サボり癖があってバイトも長続きしませんでした(笑)。でも好きなことくらいはちゃんとやろうと思ったのがきっかけでした。初連載時は無名の新人としてデビューしたわけで、「1週でも休んだら忘れられてしまう」っていう恐怖がありましたね。もちろん休み自体を悪だとは思ってはいないですよ。でも、「絶対に休みたくない」という覚悟じゃないとプロの先輩方に勝てないと思ってました。
――秘訣は覚悟なんですね! その恐怖心は今でも抱いているのですか?
真島先生:
はい、常に思ってますよ。「1週休んだだけで忘れられてしまうんじゃないか」って。この無我夢中の結果が〝休載なし〟になったんだと思います。
●日常全てが漫画のネタになる
新人漫画家からの質問③
忙しい連載中にどうやって新しいものをインプットしているのでしょうか?
真島先生:
僕が新人漫画家の皆さんに伝えたいのは、漫画以外の物事にたくさん触れることも大切だということです。ゲームや映画、小説だったり……。でもそれだけじゃないんですよ。メディアにかかわらず、友人と遊ぶことなども大切です。今はこんなご時世だから難しいかとは思いますけど、友人との会話で生まれたエピソードなんて五万とあるので。やっぱり、〝漫画バカ〟にならないで、色んな事をやった方が引き出しは増えていくんじゃないかって思いますね。
●バトルは感情のやり取り
新人漫画家からの質問④
バトルシーンでは、その最中のセリフも大切になってくるかと思いますが、どのようなことを意識されているのでしょうか?
真島先生:
説明口調にならないようには気を付けてますね。やっぱり読者が説明を読んでいると感じてしまったらその時点で面白くはないので。絵を見て、感情のやり取りだけで何が起きているのか分かるっていうのが一番理想ですよね。バトルを演出する上では、どれくらい痛がっているかっていう顔だけでもすごい読者に伝わると思うので、そういうところも意識して描いています。
▲敵キャラクターのリアクションだけで、重力が乗った重い拳の威力が伝わる。
●シーンの移り変わりは工夫を楽しむ
新人漫画家からの質問⑤
シーンとシーンの繋ぎが下手で、唐突な印象になってしまいます。シーンの繋ぎ方ではどのようなことを意識されていますか?
真島先生:
これはもう、昔からやっている手法なんですけど、やっぱり〝ワード〟で繋げるとかは多用していますね。基本的にはそのキャラクターを匂わせてから、シーンを移り変えています。端的な例だと、「シキ」ってワードを他の場所で出してから、シキの場面に移り変えるとか。あとは、感情とかテーマで繋げることもできるんです。他にも別々の場所にある同形のオブジェクトをリンクして繋げるとか。これを考えるのは楽しいところですね。
――なるほど。勉強になります! 同様に、回想シーンに入る際も難しいと思うのですが、意識されていることはありますか?
真島先生:
回想は、一番気になるところで入りたいですよね。知りたいと思ったところで回想に入らないと意味がないんですよ。回想の1コマ目から気になるとか、回想に入る前から気になるとか。何かしら〝興味〟のフックが必要かなとは考えています。
▲「撃つ」というワードで別々の場所の戦況を繋げている。
●ファンタジー漫画は「感情」
新人漫画家からの質問⑥
ファンタジー作品を描くにあたって世界観を伝えるのが難しいと感じています。気を付けているポイントがあれば教えていただけないでしょうか?
真島先生:
僕が思う理想は、「説明がなくても世界観が分かる」ことです。キャラクター同士の会話であったりとか。それが一番理想なんですよ。極力、プロローグが無いものと言いますか。キャラの会話で自然に世界観を理解してもらうためには、もちろんキャラの強さというのは大事ですし、1話目でどれだけキャラを立たせるかが大切だと思いますね。でも実は、僕がそれ以上に大切にしていることがあるんですよ。
――気になります! ぜひ教えてください!
真島先生:
それは「感情」です。世界観よりキャラクターより大切にしているものが、「感情」です。というのも、ファンタジーの世界って実際には無いモノなんです。僕たちが分からない世界なんです。でも、「感情」だけはファンタジー世界でも現実世界でも共通するものだから、読者もそこには乗って行けるだろうと思うんです。魔法だとかモンスターだとかは見たことないけど、キャラの「感情」は見たことあるぞって。そういう面で、ファンタジーを創る上では、「感情」というのはすごく大切だと考えています。
読者が分からないものの中に、分かるものは絶対に必要。それが「感情」である、と僕は思っています!
――貴重なお話をありがとうございました!
▲『FAIRY TAIL』の第1話目。ナツの「怒り」の感情が描かれている。
「漫画家への花道」
真島ヒロ先生 番外編!!
ここからは、惜しくも本誌に収まりきらなかった内容を大公開! 初連載時の苦労やオリジナル技発明のマル秘テクニックなど、ここだけの情報が盛りだくさんです!!
●マガジンらしさに囚われない
新人漫画家からの質問 番外編①
連載に向けて2話、3話と続きの話を作っていく時のコツなどありますでしょうか?
――連載を確約するためには、「連載ネーム」を会議に提出する必要があったと思うのですが、特に初連載『RAVE』の時のことについて、当時のことや今の新人漫画さんに向けてのアドバイスなどがあれば教えていただけないでしょうか?
真島先生:
『RAVE』の時は4話まで「連載ネーム」を描きました。というのも、主人公のハルが旅立つのが4話目なんですよ。最初のネームでは1話目で旅立ってたんですけど、当時の担当からはそれだとマガジンの読者にはテンポが速すぎると言われてしまって……。それからは「マガジンらしさ」っていうのを大切にして描き直しましたね。それも数えきれないほど、わけわからないくらい描き直しましたよ、本当に。
――真島先生でも連載までには何度も描き直されていたんですね。ちなみに、その「マガジンらしさ」とはどういったものだったのでしょうか?
真島先生:
当時の担当と話したのは、マガジンの読者はじっくり読みたい人が多いから、ちゃんと時間とページをかけて物語を進めて行こうということです。だから、ハルが旅立つところは4話目になったんです。新人時代の僕はマガジンらしさなんて分からなかったですから、「4話もかけて旅立つのかよ!」って当時はすごく戸惑った記憶がありますね(笑)。
でもこれは20年も昔の話ですし、当時はファンタジー漫画とかは全くなかったから、読者に受け入れられるための「マガジンらしさ」だったんだと思います。逆に今だったら、そういうのに囚われない、自由な発想の方が受けるのかもしれませんね。今の新人漫画家さんにとっては、マガジンらしさに囚われないことが大切かなって思いますね。
▲『RAVE』第4話のラスト。ハルが旅立っている。
●苦手な絵に立ち向かう
新人漫画家からの質問 番外編②
真島先生はどんな絵でも、本当に何でも描けるように見えるのですが、漫画を描く上で苦手な絵や分野はあるのでしょうか? ある場合、連載されている中でどのように向き合っているのでしょうか?
真島先生:
いくらでもありますよ(笑)。今だったら機械の絵とか超苦手ですよ(笑)。しっかりと形が決まっているものが苦手で、でも逆に、ファンタジーの自然物だとか、魔法とかの丸いエフェクトなんかは大好きです。
……とはいえ、描かなければいけないところは、もちろん描きます。キャラクターは絶対に自分の手で描きたいですから。苦手でも描かないといけないところは頑張ります。だから回によっては、面倒だなって思う時は未だにありますよ(笑)。
●名前は「響き」を大切に
新人漫画家からの質問 番外編③
オリジナルの技を考えるとき、名前に付いて結構悩んでしまうのですが、真島先生は技名をどう付けているのですか? また、どのような点に注意していますか?
真島先生:
技名は基本的にノリですよ。かっこいいのが思い付いたら、それを採用しています。だからしばらくしてから後悔することも多々ありますよ(笑)。
あとは僕の仕事場に、むかーしから使ってるボロボロの「ネーミング辞典」っていうのがあるんですよ。今でも売っているものですが、各国の単語が並んでいる本で、これを見ながらかっこよくて響きの良いワードを探していたりします。
――「ネーミング辞典」とは意外でした! キャラクターの名前でも注意されていることはあるのでしょうか?
真島先生:
やっぱり「響き」を大切にしていますね。キャラクター名も必殺技も、実際に声に出して名前を呼んだときの気持ち良さみたいなのは意識していますね。
▲『七星剣(グランシャリオ)』という必殺技。
これも「ネーミング辞典」にヒントがあったとか……。
●漫画を描き続ける人生
新人漫画家からの質問 番外編④
もし生まれ変わったとしても漫画を描きますでしょうか? ペンネームや作風などを変えてみたいなどのお気持ちも、もしあれば教えてください。
真島先生:
僕は、やれるものならまたやりたいと思います。でも、自分を変えてみたいっていうのはないですね。ただ漫画を描きたいなっていうだけです。
――素晴らしいお答えをありがとうございます!
――真島先生、改めて、お忙しい中ありがとうございました!!
『EDENS ZERO』は週刊少年マガジンで大好評連載中!
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第107回新人漫画賞
特別審査委員長は、瀬尾公治先生!!!!
締め切りは2021年9月30日当日消印有効
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!