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【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第14回 そんな見方したことないよ! 「2」論!

今回は、「別マガ」10月号に掲載された【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第14回 そんな見方したことないよ! 「2」論を大公開!

 

●別マガ異色のエッセイ連載、第14回―!
ショウ年マンガ

音楽家ヤマモトショウの自由研究
第14回 そんな見方したことないよ! 「2」論!

■なんだ、その入りは…?

 この連載も2年目に突入しました。大変ありがたいことなので、今日は「2」の話をしようと思います。
 音楽の世界にいるとよく「一発屋」という表現を聞きます。要はヒット曲が一曲しかない人のことです。実際その世界でやってみるとわかるんですが、一発であっても誰でも知っているようなヒット曲がある、というのはとんでもなくすごいことです。「この人といえばこれ」という曲があるのは全く簡単なことではないですし、どちらかというと、ネガティブな意味で使うことが多い「一発屋」という言葉ですが、ほとんどのアーティストは実際には「零発屋」なわけです。あるいは曲は知っている(なんとなく聞いたことがある)けど、アーティスト名は知らないということも多々あると思います。
 さて、そんなわけで「一曲あるだけ」でもかなりすごいんですが、これが二曲になったら、もっとレアケースになるわけです。それも、単にヒット曲が二つあるというよりも、「このアーティストといえば誰もがこの二曲を挙げる」となるようなパターンというのはかなり珍しいことのように思います。もう少し別の言い方をすれば「誰が考えても代表曲がその二曲になるアーティスト」ということです。

 

■私見に次ぐ私見―これぞ、自由研究!!

 絶対的な正解があるわけではないんですが、例えばCHAGE and ASKA(以下チャゲアス)であれば、もちろんヒット曲は多数あるものの、基本的には「SAY YES」と「YAH YAH YAH」の二曲に収束するのではないでしょうか。ちなみにこの二曲は、シングルの売り上げとしてもチャゲアスのトップ2で、どちらもダブルミリオン(200万枚)を売り上げています。同一アーティストでダブルミリオンを二枚出しているアーティストは、日本にはもう一組しかいません。それはMr.Children(以下ミスチル)で、その二曲というのは「Tomorrow Never Knows」と「名もなき詩」です。
 ところが、この二曲が「誰もがミスチルの代表曲としてあげる二曲か」というと、前述のチャゲアスほど絶対にそうとは言えないように思います。これはもうシンプルに、ミスチルはヒット曲が多すぎるということもあるのですが、ライブでの代表曲、時代ごとの代表曲など、様々な要素が絡んでくるからでしょう。単純に数字としてのトップ2が、ここでいうところの「二曲」になるとは限らないということです。

 

■「2」の漫画家は存在するのか!?

 この「2の人の話」は、音楽の現場などでも誰と話をしてもかなり盛り上がるので、ぜひみなさんも「二曲に集約されるアーティスト」というのを考えてみてほしいのですが、こちらは『ショウ年マンガ』のエッセイということで、今回はこれのマンガ版を考えてみたいと思います。
 つまりマンガ家の先生で、「代表作が二作」ということです。ここで注意したいのは、単に二作の代表作があるということでいえば、特にレジェンドクラスではそれなりの数になるということです。今回はそうではなくて、「誰が選んでもその二作になる」かつ「その二作のどっちが好きか、あるいはどっちが一番の代表作か、という議論がほぼ半々にわかれる」という例を探してみたいのです。ちなみに、お気づきかと思いますが完全に主観であり、遊びでしかないので、厳密性とか、売り上げ上の話とかは気にしないでください。納得感があればいいんです。感覚の話でしかないことの証左として、この連載でも度々話題に出している鳥山明先生の『Dr.スランプ』と『ドラゴンボール』は自分としてはこの例に入っていないのです。もちろんどう考えてもこの二作は鳥山先生の二大代表作であることは間違いありません。ところがなんとなくこの例と違うということは、わかっていただけるのではないかと思います。
 実際そのくらいの縛りで考えてみると、相当難しいですよね。まず、レジェンドならそれなりにいるかもとはいっても、楽曲以上に代表作のマンガが二作あるのは相当特別なことです。特に誰もが思い出せるような代表作という時点で、連載がある程度長く続いていた作品ということになります。そのような長期連載が二作あるだけでもまず相当な時間を要するわけです。それだけ長い期間、第一線でいることは並大抵ではありません。音楽であれば、数か月の活動期間で「2の人」になれるかもしれませんが、マンガではそうはいきません。
 鳥山先生はちょっと違うといっておいて、どうなんだと思われるかもしれませんが、週刊少年ジャンプでいえばやはり冨樫義博先生は複数作のヒット作がある代表格と言えるでしょう。そして、おそらく多くの人が『幽☆遊☆白書』と『HUNTER×HUNTER』の二作を挙げるのではないでしょうか。もちろん『レベルE』など他にも名作はありますが、一般的な知名度や、連載期間などを考えるとトップ2がこの二作であることを疑う人はいないと思います。しかしながら、少し難しいのは『HUNTER×HUNTER』が現在も連載中であるという点です。もちろん、ここから評価が下がるということはありえないわけですし、すでに日本のマンガ史に残る名作であることに疑いはないのですが、ここからの展開によってはさらなる境地に達する可能性もあります。(実際、現在進行中のストーリーは、もはや通常のマンガ表現の域は超えている、と考える人もたくさんいるでしょう)。そういうわけで冨樫先生が「2の人」なのかというのは、まだ確定できないということになります。

 

■巨大な「2」を持つ少年マンガの巨匠…!!

 そもそも現役の作家についていえば、今後の新作なども含めて代表作が増える可能性があるので、あくまでも現時点でということなのは間違いないのですが、それでも、これは…という二つの作品があります。それが藤田和日郎先生の『うしおととら』と『からくりサーカス』です。今、まさにこの2大タイトルを並べて書いてもみても、どっちを先に書くべきかと悩みました(多くの人にならって、書かれた順番に並べています)。おそらく藤田先生の代表作ということで、誰に聞いてもこの二作のどちらかを挙げるように思いますし、しかもそれがほぼ二分するのではないでしょうか。他にも長期連載となった『月光条例』『双亡亭壊すべし』もありますが、連載期間としてもこの二作は『うしおととら』がコミックスで33巻、『からくりサーカス』が43巻と、最も長い二作になっています。
 『うしおととら』は藤田先生の連載デビュー作で、僕自身は連載がすべて終了してから読み始めたのですが、面白すぎて一晩かけて一気に読んでしまいました(そのくらい面白かったのですが、もったいなかったとも言えるかも)。デビュー作にもかかわらず、展開に無駄がほとんどなく、33巻の間ずっと熱いテンションで物語が進みます。少年マンガ好きで、読んでない方はラッキーすぎるかもしれません。今すぐ全巻一気読みしましょう。『からくりサーカス』は逆に、連載中から読み始めましたが、複数の話が同時に進行する複雑な構成で、連載で読んでいると自分的には主人公だなと思っているキャラクターが何か月も出てこないということもありますが、すべてのキャラクターが魅力的で、彼らを掘り下げていくストーリーはどれもハズレなしという感じです。伏線回収も相当に気持ちいいですね。こちらも今読むとしたら43巻一気に読んでしまうような気がします。
 なぜこの二作品が、どちらも甲乙つけ難い代表作だといえるかというと、そのどちらもが長期連載でありながら、藤田先生らしい少年マンガとしての面白さを保ちつつ、その連載期間を経てようやく得られるような最終的な大きな戦い(仲間が集まり、伏線も回収される)に収斂されていくというような共通点を持っている部分があるように考えました。しかし、その構成がそれぞれまったく異なっていて、単純なパターンを踏襲せずに、どちらにも新たな語りどころが満載だという点において、「どちらも最高」となっているのではないでしょうか。
 いずれまた、ここから先「2」の名作を持つマンガ家の先生が出てくるでしょう。そのとき、「なぜその二つが並び称されるのか」というポイントが、単に作品がヒットしたから、というだけに収まらないような予感があります。楽しみすぎますね。…いや、ここまで書いてきて思いましたが、『シルバーマウンテン』も40巻くらい読みたいから、やはり現役の漫画家さんで「2」を語るのは難しいですね…。

 

9月の担当編集
『ラブソング』『殺し屋の営業術』どちらも第1巻発売! おれの「2」となってくれ――!!

 

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