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【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第13回 祝・連載1周年! 「ベストアルバム論」

今回は、「別マガ」9月号に掲載された【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第13回 祝・連載1周年! 「ベストアルバム論」を大公開!

 

●別マガ異色のエッセイ連載、第13回―!
ショウ年マンガ

音楽家ヤマモトショウの自由研究
第13回 祝・連載1周年! 「ベストアルバム論」

■光陰矢の如し!

 連載を始めて、早1年となりました。1周年です!
 実はこの連載は、私が「定期的に文章を書くことをやっていきたい」という話をSNSでしたときに、編集のTさんに声をかけてもらってスタートしたのですが(まさかマンガの編集者の方から声がかかるとは思いませんでしたが)、まずはちゃんと定期的に1年書き続けることができてよかったなと思っています。
 マンガは週刊や月刊などペースの決まった仕事が多いのかなと思うのですが、同じクリエイターでも、実は音楽家はほとんど「定期的な仕事」というのが存在しません。毎年決まった時期にライブなどはあるかもしれませんが、例えば「月に1回」など、ある一定のペースで新曲を出し続けるアーティストはほとんど存在しないのではと思います。新人の作家に「週に何曲、月に何曲は書くように」というような話をすることはありますが、これは練習のためという感じで、実際にそういう決まった間隔で曲を作らないといけないシチュエーションは作曲家にもないでしょう。
 もちろん、ある程度先々のリリースプランというようなものは決まっています。「夏頃に新曲を出す」とか「年末にはアルバムを出す」とかそういったことです。ただ、例えば直近で出した曲が予想を超えてヒットした、という場合に、そのリリースプランが変わるなんていうことは日常茶飯事です。マンガがヒットしたからといって、急に週に2本掲載されたりはしないですから、このあたりは商習慣の違いは明らかにありますよね。

 

■頂点にして原点? ベストアルバム!!

 ペースの違いもあるのですが、音楽に特有のリリース体系の一つに「ベストアルバム」というのがあります。これは通常のアルバム(新曲などが含まれる)とは違って、既出の楽曲の中からそのアーティストを代表する楽曲を集めてひとつのアルバムにしたものです。明確な定義はないですが、「このアーティストといえばこの曲」という感じの有名な曲だけを集めたものと思ってもらえれば良いと思います。
 これは基本的にCDが中心だった頃の文化で、最近はサブスクが中心になってきており、正直昔ほどの価値はなくなってきたかとは思います。なぜなら、プレイリストとして「ベストアルバム」とほぼ同じものを自分で作れてしまうわけですからね。とはいっても、今でもある種のお祭りとして「ベストアルバム」はリリースされています。
 実際日本のCDアルバムセールスの歴代上位を見てみると、かなりベストアルバムが上位に入っていることがわかります。これはやはり、この一枚を買っておけばそのアーティストの聴きたい曲がほとんど聴ける、というのが理由であろうと思います。通常のアルバムで、自分だけが好きな曲を見つけるというのは楽しいですが、一枚3000円くらいはするので、それで聴きたい曲が一曲しか入っていなかったとなればなかなか痛い出費ですからね。それに比べれば「ベストアルバム」というのは、かなり打率の高いアルバムということになります。
 もちろん、アーティスト側にも色々な考え方はあって、「通常のアルバムはコンセプトをもって作っているのだから、ただの寄せ集めになってしまうベストアルバムのようなものは出したくない」と考える人もいたようです。
 サブスクサービスの浸透によって、ベストアルバムは必要なくなったと書きましたが、むしろ現代は「すべてのリリースがベストアルバムになった」ともいえるかもしれません。それらはすべてサブスクで事前に聴くことができるわけですし、プレイリストとして各自がエディットすることができます。

 

■漫画のベストアルバムは可能か…!?

 マンガで同じようなことがないのは、まず基本的にマンガは各話がつながるストーリーがあるからということでしょう。一話完結のものであれば原理的には不可能ではないように思います。例えば『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治先生)で感動系の回だけを集めたベスト版のようなものをイメージすることは可能です。あるいは『名探偵コナン』(青山剛昌先生)で「黒の組織」が出てくる話だけをピックアップするというような感じでしょうか(しかし実際にはそれだと細かい伏線が回収できない、ということはあるでしょうが)。『ブラックジャック』(手塚治虫先生)のベストセレクションを考えることは可能かもしれませんが、正直どの話も良いので、それをつくったところで結局は全話集になってしまう気がします。
 最近はweb系のマンガサービスでは、1話目は無料とか、3話目までは無条件で読める、といったものが多いかと思います。これは冒頭を読んでもらうことで、その後も読んでもらうチャンスになり、そのマンガを読むきっかけをつくっているということですよね。ベストアルバムに紐付けていうのであれば、マンガであれば結局1話目がベストである必要があるともいえるかもしれません。これはなかなかハードルが高いですが、そもそも連載が決まるかどうかということも最初の数話を書いた段階で決まるようですから、その数話の強度というのは正にその作品の「ベスト」の一つではあるのかなと思います。

 

■少年ヤマモトショウ、ベストアルバムの想い出

 さて、そんなベストアルバムですが、自分自身にとってもアーティストとの出会いになっていたり、いくつかの思い出があります。最初に思い出すのは、ビートルズの「1」というベストアルバムです。これは私がちょうど色々な音楽を聴き始めた中学一年生のときに購入したもので、その少し前にリリースされました。ベストアルバムはその選曲に明確な定義がないこともありますが、このアルバムはビートルズくらいのビッグネームにしかできない「ビートルズの活動中にイギリス・アメリカで発売されヒットチャートでナンバーワンになったシングル曲だけを集めた」という非常にわかりやすいアルバムです。このアルバムを通して聴いた時に何度も思ったのは「これもビートルズだったんだ」という感覚です。
 初めて聞く曲でも、実はすでにそのメロディの一部をCMやテレビなどのBGMで聴いたりしていたのだなとわかりました。ビートルズの有名楽曲(そもそも有名楽曲ばかりなんですが)はほとんど収録されているのですが、「ナンバーワンになったシングル曲」という縛りがあるため、例えばCMなどでもよく使われる有名曲「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」などは収録されていません(この曲は英米ではシングルカットされなかったので)。ビートルズは良い曲が多すぎて、様々な意見はあると思いますが、感覚的にベストを30曲くらい選ぶなら入る曲なのではないかと思います。自分の同世代はこの「1」でビートルズを知った人も多いと思いますし、文字通り入り口にはなっているように思います。
 しかしながら、ヒット曲が多すぎて、選ぶのが難しいというパターンはベストアルバムでも時折発生しています。そのため曲選考の理由づけとして「ファンが選ぶ」というスタイルもありえます。ファンの投票によって、収録曲を選ぶスタイルのベストアルバムも多数存在しています。僕が買った中でそのスタイルの最初のアルバムはGLAYの「DRIVE」というベストアルバムでした。こちらはその直前のシングルに入っていたリクエストハガキでファンが投票するというスタイルで作られました。そういった流れなので、シングル曲ではなくてもファンに人気の曲やライブで人気のある曲などが入っていたりします。とはいえ、完全に投票の順位だけで作られたわけではないようです。1stシングルの「RAIN」は入っていませんし、実は僕がGLAYで一番好きな「ここではない、どこかへ」というシングル曲も収録されていません。大好きなベストアルバムなのですが、自分にとっては絶妙にベストではないというのも今となっては良い思い出になっています。結局、それとは別にシングルを買うきっかけになったりもしますしね。
 ベストアルバム、私は自分のグループで出したことが一度もないのですが、このエッセイをまとめたベスト版とかいつか出ないものかなと、初のベストリリースを企んでいたりもします。

 

8月の担当編集
『はじめの一歩』のベストバウトシリーズは非常におすすめです! また出ないかなぁ。

 

ぜひ周りの人にも教えてあげてください!

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