
今回は、「別マガ」7月号に掲載された【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第11回「ショウ年たちの憧れ! 「必殺技」論!!」を大公開!
●別マガ異色のエッセイ連載、第11回―!
ショウ年マンガ
音楽家ヤマモトショウの自由研究
第11回「ショウ年たちの憧れ! 「必殺技」論!!」
■大人になっても、好きなやつ。
必殺技っていいですよね。漢字だけ見るとなかなか物騒なワードですが、物語には欠かせない存在です。実は僕も、「必殺」とまではいかないまでも、いくつか技を出すことできます。
というのも、音楽、特に楽器にはそれぞれ特有の演奏技術みたいなものがあって、これがなかなか必殺技っぽい雰囲気を持っているのです。僕はプロのミュージシャンとして考えると、それほど一つの楽器の演奏に熟練しているわけではないのですが、それでも一応長年弾いているギターであれば、「なんかやってみてよ」と言われた時に、技的なものを披露することができます。
例えば「ピッキングハーモニクス」という技術があります。もうすでに名前の時点で技っぽくないですか? これはギターを弾く時に意図的に倍音を出して「キュイーン」みたいな高い音を出すような奏法なのですが(文章で書いてもさっぱりわからないと思うので、YouTubeとかで検索して聴いてみてください)、エレキギター初心者には直感的にはどうやってその音を出しているのかわからないみたいです。ただコツを摑めば奏法としては基本的なものでもあり、身につけると演奏が一気にかっこよくなるものなので、まさに必殺技という感じです。
他には「スウィープ」という技術もあります。これなんかは敵のボスが使いそうなシンプルでかなり強力な技っぽいネーミングですね。ギターの速弾きのテクニックなのですが、正確に使うにはかなり難易度が高い技術なので、ギター中級者以降で身につける技、という感じです。
■「真似しやすい」のも重要な魅力!
さて、マンガ好きの方なら、やはりそのマンガに出てくる技を出すところを妄想したり、あるいは実際に練習してみたりという経験は一度や二度ではないのではないでしょうか。
例えば、『ドラゴンボール』に登場する「かめはめ波」。定番ですよね。あの手の動きをやってみたことがない人のほうが少ないといっても過言ではないでしょう。ポーズも含めて、かっこいいけどなんか「出来そう!」と思わせるところがすごいところです。ストーリー的にも、序盤に師匠に教わった技(教わったというか、悟空の場合は勝手にやったらできちゃったって感じなわけですが)を物語の終盤でもちゃんと必殺技として使っているというのもいいですよね。
『ドラゴンボール』には他にもユニークな技がたくさん登場しますが、戦闘力5以下である我々にはなかなか難しいものも多いかなと思います。瞬間移動とか、普通に生活していても使えたら超便利なんですが、大人になってしまった今となっては「身体を瞬間移動させる技だとして、自分の着ている服とか、荷物もちゃんと移動できているのはなんでだろう」とか思ってしまったりします。
そんな中、もう少し「出来そう感」が高い必殺技がいっぱい出てくるマンガといえば『キャプテン翼』です。自分は翼くんの地元でもある静岡で育ったので、とりあえず子供はみんなサッカーをやっていました。
翼くんが最初に身につけて、大事な試合では必ず決め技(サッカーの決め技って何だ、という話なのですが読んでもらえば意味はわかると思います)となる「オーバヘッドシュート」などは、現実のサッカー選手もプレイの中で繰り出すことがあります。もちろん現実でもそれは結構な大技なのですが、子供にとっては大技こそやってみたいもので、僕も当時はもちろん練習しました。
主人公たち小学生から中学生へと成長していくにつれて、技も次第に現実味がなくなり、「ちょっと練習してみる」というわけにはいかなくなってきます。翼くんが中学生時代に苦労して身につける「ドライブシュート」という技、これも現実にできないわけではないらしいのですが、読んでもやり方がさっぱりわからないんですよね。ということで僕らが遊びで技をやる時もとりあえず技名を叫びながら普通のシュートをするだけ、みたいなことになってしまいます。まあそれはそれで楽しいんですが。
しかし、ここで作中屈指のストライカー日向小次郎が新必殺技「雷獣シュート」を生み出します。これは、地面を足で蹴ってその反動を生かしてボールを蹴ることでこれまで以上の浮き上がるような力をシュートに乗せることができる、という技です。これなら、一応物理的な原理が明らかなので、小学生の自分にも挑戦することができるような気がします。
ところがこの技、やってみると大概の場合失敗して地面を強く蹴るだけで、ただ足を痛めることになってしまいます。そんなわけで当時、一部の小学校やサッカーチームでは「雷獣シュート禁止」のお達しが出たりもしたようです。もちろん僕の場合も実戦の試合でこの技が使えたことはありませんでした。でも、それだけ子供たちの間に浸透していたということでもありますよね。
■本連載の必殺技! 「元祖」を研究!!
語りたいマンガの技の話はたくさんあるんですが、元祖はなんなのでしょうか。例えば『鉄腕アトム』には必殺技はないのですが、有名な主題歌でも言及されているように「7つの威力」があります。これはアトムの特殊能力みたいなもので、足のジェット噴射とか、目のサーチライトなどです。イメージする「必殺技」とはちょっと違う気もします。
スポーツ漫画だと、『巨人の星』の魔球「大リーグボール」がそれに当たるでしょうか。いわゆるオリジナルの変化球ということになるのですが、ネーミングが1号、2号というような通し番号になっているのは、今の感覚からするとちょっと意外な感じがします。でも、そもそも野球の変化球って「大リーグボール」じゃなくても、はじめてそれを見た人にとっては「魔球」ですよね。「変化球はすべて輸入されたものだから、日本でオリジナルとしてつくられて大リーグに逆輸入されるくらいのもの」というイメージでつけられているネーミングとしては、その不気味さも相まってちょうど良いような気もしてきます。実際、作品中盤のメインストーリーの一つがこの「大リーグボール2号」(「消える魔球」)の謎を追求するというものでした。今のようにインターネットで簡単に情報が手に入る時代ではないので、新しい変化球の「魔球」っぷりは、現代の比ではないのでしょう。
そういえば、エレキギターのテクニックの一つに「タッピング」というものがあります。これはライトハンド奏法とも言われるもので、要は本来ピックを持って弦を弾いている右手の指でギターの指板をおさえて音を出すことで、両手で(鍵盤楽器を弾くように最大10本の指を同時につかって)弾く奏法で、すさまじい速弾きが可能になります。とてつもない速さでピロピロいっているアレです。
この奏法自体は昔からないわけではなかったのですが、ロックの世界でこの奏法の始祖といえば、必ずエディ・ヴァン・ヘイレンの名前があがります。彼は自身の名を冠したヴァン・ヘイレンというバンドで1978年にデビューするのですが、その最初のアルバム『炎の導火線』では冒頭からエディのギターテクニックが炸裂しています。特に二曲目のギターインスト曲『暗闇の爆撃』で出てくるタッピング奏法は当時相当に衝撃的だったようです。それを聴いた人の多くが「速すぎてどうやって弾いているのか本当にまったくわからない」と思ったという話もあります。上でタッピングの奏法を文章で書いたわけですが、これも今となっては基本奏法の一つなのでこうやって説明できるわけで、当時は本当に「消える魔球」のように「何が起こっているのかさっぱりわからない」というものだったのではないかと思います。
もし聴いたことがない方がいたら、ぜひその必殺技の衝撃を味わってください。絶対やってみたくなりますよ。指でギターを叩いてその反動で音を出すような奏法なのですが、雷獣シュートのように指を痛めることはないので、安心して挑戦してください。
6月の担当編集
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