
今回は、「別マガ」4月号に掲載された【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第8回「モヤモヤ業界用語? 「手がける」論!」を大公開!
●別マガ異色のエッセイ連載、第8回―!
ショウ年マンガ
音楽家ヤマモトショウの自由研究
第8回「モヤモヤ業界用語? 「手がける」論!」
■今月のヤマモトショウは切れ味、あります
僕の作った楽曲が、アーティストの皆さんやファンの皆さんの力によって話題になったときに僕自身のことも取り上げていただき、ニュースなどで紹介されるという機会が増えたのですが、その中で気になっていることがあります。これを気にしているのはきっと僕だけなので、これを読んでも気にせずに使っていただいてもよいのですが、一応ここで書くことで少しだけそのモヤモヤを晴らしておきたいのです。
それは「手がける」という言葉です。
メディアではよく「ヤマモトショウはアイドルのAや歌手のB、バンドCなどを手がける音楽プロデューサーである」というような紹介をされます。このエッセイがスタートしたときもそう書いてあったかもしれません。僕はたしかにAというアイドルの曲を書いたことがあるのですが、それはせいぜい頼まれて一曲書いたというだけの話なのです。
例えば、秋元康さんがAKB48や乃木坂46を「手がける」と記載されるのは、まったく違和感がありません。全曲の作詞をされている総合プロデューサーなわけで、誰もがそれらのグループを見たときに「秋元さんがプロデュースをされているグループだ」ということを想起するからです。しかし僕が(実際には書いたことはありませんが)乃木坂46の楽曲を一曲作曲したからと言って「乃木坂46の楽曲を手がけるヤマモトショウ」などと書かれたら、さすがに申し訳ないというか、それは誇大広告だろうという気になります。
僕の場合は、fishbowlというグループに関しては全曲作詞作曲をしてプロデュースもしていますから、これは「手がける」で良いとは思います。FRUITS ZIPPERはギリギリのラインで、何曲か多くの方に知ってもらえている楽曲をつくっているので、「代表曲を手がけている」くらいの紹介なら妥当に思えます。ただ実際には別にそんなことを言わずとも、「この曲とこの曲を書いた」という情報だけで良いでしょう。fishbowlに関しては全部なので面倒だから「手がける」でまとめているというのならわかります。
もう一つこの紹介の仕方の気になるところとして、「楽曲」単位ではなく、アーティストの名前が並んでいるという点があります。よく作曲家の方の自己紹介などでも、「誰々の曲を書いている」というように名乗られるのですが、それこそ秋元さんのように全曲作っているならともかく、そのアーティストの楽曲の大半には関係ないはずの人をそのように紹介するのは少し大袈裟ですし、実際その人の作品を知るためにもうワンステップ調べる必要が出てきてしまいます。これはもしかしたら音楽作家特有の現象かもしれません。漫画家の先生に「何を書いているのか?」とたずねて「マガジンです」と答えるようなものですよね。間違ってはいないけど、同じようなことを言うにしても「マガジンで何々を連載している」と答えるのではないかと思います。
■モヤモヤ用語は一つじゃない!!
お陰様でモヤモヤが晴れてきましたが、「手がける」に付随してもう一つ音楽業界特有の謎用語をご紹介します。それは「プロデューサー」です。この言葉自体は割とどの世界にもありますが、音楽の世界では相当範囲が曖昧な言葉です。
実際僕も仕方なくそう名乗ることもあるのですが、なるべく「音楽プロデューサー」と自己紹介しています。実際、音楽業界におけるプロデューサーという人の仕事はかなり多岐に及んでいて、作詞作曲からレコーディングやミックスといった音楽のクリエイティブ面での根幹になるような部分を自身ですべて行う人もいれば、こういったことは一切せず「全体のまとめ役」のような仕事に終始する人もいます。そしてさらにいえば、今挙げたようなことを個別にやる人もいれば、本当に全部をやっている人もいます。僕はfishbowlというグループでいえば、その「全部」をやっている感じです。
プロデューサーではなく、音楽プロデューサーと書けば、どちらかといえば音楽の部分に集中しているという印象を与えるとは思いますが、だとしても作曲や編曲をしているかどうかはわかりません。別にしていなくてもそのように名乗ること自体は問題ないのですが、日本では小室哲哉さんやつんく♂さんなど、音楽の創作的な部分を担当される方が「音楽プロデューサー」として紹介されることが多く、かつ非常に有名なので、そういった印象が根強いのかもしれません。
例えば映画の世界なんかでは、プロデューサー=映画の中身を作っている人、ということはまずないかと思います。それは監督、脚本家、ディレクターなどの仕事ですよね。どちらかといえば、企画をし、お金や人を集めてくることが仕事でしょう。プロデュースという言葉の語源を考えてみると、「生み出す」という意味なので、これだけならばここまであげたような意味のどの部分も内包しているように思います。
僕自身は音楽プロデューサーの仕事は、自分で作っているかどうかということよりも最終的にそれを楽曲という作品として作り上げて、世に出すことだと考えています。その過程で自分が作る必要があれば作りますし、そうでなければ適切な人に依頼したりするでしょう。実はfishbowlの仕事としては、このような音楽プロデューサーの仕事以外に、まさに前述した映画プロデューサーのようなお金や人を集める仕事もしています。そういった意味では便利な「肩書き」なので自分自身は有効に使っていますが、考え方によっては悪用されてしまうこともあります。実際「音楽プロデューサー」という肩書きの怪しげな人物がいそうなことは割と想像できるんじゃないかなと思います。マンガにも結構出てきますよね。
■音楽プロデューサー≒漫画編集者論!!
ところで、この連載を始めて改めて意識したこととして、マンガの世界においては編集者の方の仕事が、音楽プロデューサーの仕事に近いのではないかと思いました。
僕は作詞や作曲もしますが、基本的にはまずはアーティストやクリエイターの存在が先にあり、それを「プロデュース」するのが音楽プロデューサーの仕事です。ざっくりと言えば、彼らの能力を生かしながら良い作品を作っていくことが最もベーシックな作業になってきます。僕の場合、アーティストがそもそもどんな活動をしたいのか、どのような表現をしたいのか、ということを言語化することから始めることが多いです。アーティストの周りのスタッフ(つまりそれを売ろうとする人)は当然その人に魅力は感じていながらも、さらに別の人に説明しようとした時に(売り込みをしようとした時に)意外と困ることになります。それをそのまま表現できるならばその人自身がアーティストということですし、なかなかそんなことはできません。ライブを見て貰えばいいじゃないか、と思うかもしれませんが、そこまで辿り着かせるのが難しいんですよね。
だから僕が「プロデュース」をすることで、その部分を誰にでもシェアできるような形にまとめていくことになります。漫画編集の仕事も、ときには中身に踏み込むこともありつつも、基本的には作家に寄り添いながら(もちろん作家が主体となって)作品を作っていくことなのではないかと想像しています。
マンガの原作のネタを考えてみるというのは趣味として楽しいのですが、最近では「自分が編集だったら」ということまで妄想したりしています。マンガの内容を考えることとはまた違った面白さが発見できるような気がしています。
3月の担当編集
この連載をプロデューサーとして手がけてから、音楽を聴くのがもっと好きになりました!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!
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