
新人漫画家さん必見!! 今回は、第117回新人漫画大賞締め切り前特別企画として、漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」を大公開! 『ゼロとヒャク』の江戸翔一朗先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!
新時代の青春バスケ物語!!
『ゼロとヒャク』の江戸翔一朗先生に聞く!
臨場感あふれる画面と、リアリティある物語づくりの極意!!

週刊少年マガジンにて『ゼロとヒャク』を大好評連載中の江戸翔一朗先生に電撃取材! 江戸先生の漫画創作論をお聞きしました!
江戸翔一朗先生Profile
大阪府出身。2021年12月期MGPにて、『ターゲット・オブ・テンフィート』で奨励賞受賞。2023年ブルーロック杯にて、『Play Style』で大賞を受賞。現在、週刊少年マガジンにて『ゼロとヒャク』を大好評連載中!
●極意1
どこにでも漫画の種はある!
――はじめに、漫画家になった経緯を教えてください。
子供の頃から漫画をよく読んでました。両親ともに漫画を読む家だったので、家にたくさんあって。中学3年のときにぼんやり漫画を描きたいなと思って高校は芸術系の学校を選びました。でも一作も描かずに卒業してしまいました。部活動のバスケに夢中になっちゃったんです。
僕は漫画を読むと、その題材のスポーツをやりたくなるんですよ。『ハイキュー!!』を読むとバレーをやりたくなるし『弱虫ペダル』を読むと自転車に乗りたくなるし…。バスケ部を選んだのは『SLAM DUNK』の影響でした。もうめっちゃ楽しくて。漫画を描くとか、勉強とか全部せずに3年間バスケ一筋でした。
――では、卒業後もバスケを続けようと思っていたのでしょうか。
高3の進路を決めるときも、バスケは続けたかったんですけど、楽しんで続けたいなと思って違う道を考えました。プロのバスケ選手を目指すのは現実的じゃなかったんです。それで、前々から描きたいと思っていた漫画の道を選びました。一作も描いたことなかったんですけど、なぜか「いける」と自信があって、漫画の専門学校に入りましたね(笑)。なので、本格的に漫画を描き始めたのは高校卒業後です。
初めて描いた作品を今の担当さんへ持ち込みました。『ターゲット・オブ・テンフィート』というバスケを題材にした作品で、2021年のMGP(現在のマガジンライズにあたるマガジンの月例賞)で奨励賞をとりました。当時はまだ全然下手くそだったんですけど、そのときから担当さんは、僕のことを躍動感ある人体を描くのが上手いなって、思ってくれてたみたいです。
その後、専門学校の出張編集部で出会ったグランドジャンプの編集さんともやりとりしながら漫画の制作を続けました。その方との繫がりで坂本眞一先生のアシスタントを2年程やらせてもらいました。そこで絵を基礎から教えていただいて、一気にレベルアップできたと思います。この時は昼間はアシスタントに行き、夜は自分のネームを作る日々で、漫画に浸ってました。
週マガ連載に繫がったのは2023年開催の、スポーツ漫画限定漫画賞「ブルーロック杯」です。担当さんが声をかけてくれて、一緒に応募作品の企画を練っていきました。連載に繫がるような賞だったので、連載マンガの企画として面白いと思ってもらえるようなテーマを考えて「両手打ち×ストリートバスケ」に決めました。大賞をとった『Play Style』という作品が『ゼロとヒャク』の原型です。
行き当たりばったりですよね(笑)。でも思い返せば新人時代からずっとバスケ漫画を描いている気がします。

⬆︎ブルーロック杯を受賞した『Play Style』「両手打ち×ストリートバスケ」の企画を押し出した読切。
●極意2
「空気の球」や「噓影」で臨場感を
――江戸先生の漫画について、まず絵についてお聞かせください。プレー中のキャラのカッコいい動きが魅力的な『ゼロとヒャク』ですが、描くときに意識されていることはありますか。
自分がキャラになりきってる感覚で描いています。キャラクターたちがやってるバスケの動き方って、僕ができないレベルのすごいことをやってたりするんですが、それができる自分っていうのをイメージして、ワクワクしながら描いてます。
それから人間を描くとき、胴体と手や足の間に球体のような空間を作って、臨場感を出すことを意識しています。この空間の演出っていうのが、かっこよさに繫がるんじゃないかなと思ってて、僕は勝手に「空気の球」と呼んでいます。
他にも臨場感を出すために「噓影」を入れることもありますね。光源の位置からして影が落ちない所でも、奥行きが生まれるなら噓でも影を加えたりします。
絵は二次元だからこそ、臨場感を出すためには立体を錯覚してもらう必要があります。どうすればもっと臨場感を出せるか、いつも頭を悩ませていますね。

⬆ポージングを工夫して、ゼロとヒャクの間に「空気の球」を作り、奥行きや臨場感を生み出している。
――「空気の球」と「噓影」…! 独自の手法でカッコよさを追求しているんですね。カッコいい人体を描くため、新人作家さんが最初に取り組めることは何かありますか。
人体を描くという点では、クロッキーをたくさんこなすと良いと思います。クロッキーで素早く人の形を捉える訓練をしていると、人体に対する解像度が上がると思います。
また、新人時代にアシスタント先だった坂本先生がとてもリアルな絵を描く先生で、そこでライティングの意識などを学びました。光がどこから来ているか、その場所の季節、温度感を細かく設定した上で描くトレーニングは効果的でしたね。今でも光の当て方で画面を魅力的にしようって意識があります。
アシスタント先では背景も小物もなんでも描くんですが、そのおかげで自分の苦手なものを知ることもできました。僕の場合は植物が苦手です。1日かけて一輪を描けなかったこともありました。資料をちゃんと見る大切さを痛感しましたし、新人の段階でも資料を見て丁寧に描くのは心がけると良いと思います。
●極意3
違和感は迫力のカギ
――独自の空間演出や資料に基づいた背景の描き込みが、独特な絵のリアリティを生んでいるんですね。『ゼロとヒャク』では、要所に入る迫力のある画面も印象的です。描くコツはありますか。
そうですね、特にカメラワークにこだわっています。普段は読みやすさ重視で、キャラ視点に近いカメラワークで描いています。ですが物語中で変なことが起こったとか、すごいことが起こったタイミングでは、普段のキャラクターの視点からガッと外したりします。バスケのゴール裏にカメラを置いたり、床にカメラを置いたり、斜めにしたり。それが「違和感」になって印象的な絵に繫がる気がします。現実では簡単に撮れない、漫画ならではのアングルを探していますね。どの角度から描くかいつも迷うのですが、最近はドローンも発達してNBAなどの空撮を見れるようになったので、あえて下からコートを見てみるなど試行錯誤してます。
――画面作りについて、実際にどのような段階を踏んで描かれているんでしょうか。
その時々ですが、読者を惹きつけたいシーンは、絵を描く順番を工夫することがあります。『ゼロとヒャク』は体育館とかの資料写真をいっぱい集めているのですが、最初に背景の構図を決めちゃってから、どうキャラクターを配置するか考えたりします。例えばヒャクがシュートをブロックするシーンは、背景のバスケットゴールの構図を先に決めて、そこにキャラを当てはめるように描きました。
キャラから考えると描きやすいポーズとか位置になっちゃって、頭の中にある想定内の絵にしかならないんです。
背景を固定した後、それに合わせるようにしてキャラをのせる順番だと、背景に対応させるためにいつもとは違うポージングを考えたりするので、新鮮な絵が作れることがあって。自分の頭では考えつかないインパクトのある変な絵になった! ということがたまに起きます。そういう時すごく漫画家として楽しいなと思います。その分作画は大変にはなるんですけどね(笑)。

⬆背景を先に決めることで、キャラクターたちの動きがダイナミックになっている。
●極意4
リアリティとのせめぎ合い
――江戸先生の漫画について、物語についても聞かせてください。舞台となっている場所は、現実にある場所を使っているようですが…
物語のなかで、自分とリンクした場所を出したいって気持ちはあって。実は主人公たちがプレーした代々木コートは、僕が大阪から上京したての友達も全然いない時にバスケしていた思い出の場所です。
第1話で主人公たち2人でバスケをした橋の下のコートも、ずっと僕が使っていた実家近くの場所がモデルです。ゼロが夜な夜なシュート練習していたのは、高校時代、家に帰りたくなくてストリートコートでずっとシュート練習をしていた僕と重なります。舞台やキャラの行動を自分と結びつけることで、感情がのって場面の説得力が生まれると思っています。

⬆︎江戸先生が夜に練習していたコートは、ゼロの秘密の練習場所。
――試合にも、ご自身の経験や知識を反映させているのでしょうか。
リアルなバスケ知識は、試合展開に活かしています。ですが、悩ましいこともあります。漫画的な面白いに全振りしたような展開を思いついても、現実にはありえないからやめよう、と僕自身がブレーキをかけちゃうんですよ。リアルバスケ好きの方にも楽しんでもらいたくて描いているので、その人達がしらけちゃうのは嫌だなって。
僕がよくバスケのリアルを描こうとすると、担当さんに「暗すぎる」と言われます(笑)。スポーツ、特にバスケの世界はシビアで、生まれ持った身体能力が左右するところはあるし、弱いやつが強いやつに勝つっていうのはなかなか起きません。
リアリティがあって面白い、いつもそのリアルとフィクションのバランスをとって、最高の形で成立するラインを探っています。例えば『ゼロとヒャク』の主人公ゼロは両手打ちが特長のキャラクターですが、現実では珍しいプレースタイルです。だからこそ描き方には特に気を付けていて。25話では主人公の活躍を「ノーディップスリー」という溜めなく、弾き返すように放つシュートで見せたのですが、これは両手打ちが活きるシュートだと思っていて。ゼロの両手打ちに説得力をもたせた形で描けた手応えがあって、お気に入りの回です。

⬆第25話にて、「両手打ち」が活きるノーディップスリーで試合を大きく動かすゼロ。
●極意5
魂込められるものを探せ!
――最後に、これから連載を目指す新人作家さんに向けてメッセージをお願いします。
かっこいいとか、可愛いとか、何でもよいのですが、自分が「これがいい」と思うものは大事にしてほしいです。強い魂といいますか。
僕の場合、魂を込めるものがバスケでした。学生の頃、朝から練習に行ってチームの誰よりも部活に打ち込みましたし、バスケのことは誰にも負けたくありませんでした。連載が決まったときも全バスケ漫画を上回ってやる! と思っていましたし、今でもその気持ちで連載しています。
「これ」だけは誰にも負けないぞというものが見つかっていない人は、最初に探してみてもいいんじゃないでしょうか。周りから評価を得るために描くのではなく、全力で自分の魂をぶつけることが大切だと思います!
――ありがとうございました!
ありがとうございました!
第117回新人漫画大賞
特別審査員は『聲の形』『不滅のあなたへ』の大今良時先生!!

締め切りは2026年9月30日当日消印有効! ご応募お待ちしております!!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!