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【第117回新人漫画大賞締め切り直前特別企画】〜漫画家を目指すキミに贈る〜漫画家への花道 『聲の形』『不滅のあなたへ』大今良時先生が新人漫画家の悩みを解決!

新人漫画家さん必見!! 今回は、第117回新人漫画大賞締め切り前特別企画として、漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」を大公開! 『聲の形』『不滅のあなたへ』の大今良時先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!

 

ヒット作家が語る、漫画の作り方!!
『聲の形』『不滅のあなたへ』の大今良時先生に聞く!

心を揺さぶる物語とキャラクターを生み出す極意!!

週刊少年マガジンにて『聲の形』『不滅のあなたへ』を手掛けた大今良時先生に電撃取材! 大今先生の漫画創作論をお聞きしました!

 

大今良時先生Profile
岐阜県出身。2008年、第80回週刊少年マガジン新人漫画賞にて『聲の形』で入選し、2009年に『マルドゥック・スクランブル』(原作:冲方丁/別冊少年マガジン)で連載デビュー。その後『聲の形』『不滅のあなたへ』(週刊少年マガジン)など数々のヒット作を手がける。両作ともにアニメ化を果たし、国内外で高い評価を得ている。

 

●極意1 ストーリー
描きたいシーンから逆算せよ!

――まずは、物語を組み立てていく時のことからお聞きしたいです。大今先生はお話をどのように作られていますか?


 あくまでも作り方の一つなのですが、お話の全体像をなんとなく決めておく、というのをよくやります。 最初から細部まで設定を固めるのではなく、全体の物語を薄く、広く想定しておいて、そこから描きたいシーンやクライマックスに向けて、余分な描写や設定を省いていきます。
 例えば『聲の形』では、物語終盤の将也の転落シーンが一つの山場となるようにお話を組み立てていました。第一巻から繰り返し描かれる将也の「水へ飛び込む」ことを連想させるセリフや描写は、すべて終盤に訪れる「将也の転落シーン」へ繫げるための布石として計算し、その山場を盛り上げるために、シーンを選んでいきました。他にも『不滅のあなたへ』だったら、子どものころから描きたいと思っていた現世編冒頭のフシが木と一体化するシーンに向けて物語を組み立てていました。
 漫画を作る時って、最初は頭の中に無数の選択肢が生まれますよね。その際に重要なのは、どうすれば自分の本当に描きたいシーンにたどり着けるのかを考えながら、余分なエピソードや脇道を削ぎ落としていくことだと思うんです。

⬆ラストから逆算された伏線となる場面。何気ない日常描写に見えて、結末の衝撃を最大化させるために配置されたワンシーン。

 

⬆物語は「前世編」を終え、現代社会を舞台とした「現世編」へと突入する。重要な転換点を表した場面。

 

――選択肢やアイデアを削っていく中で、「本当にこれで面白くなっているのかな?」と不安になりませんか? 読者を満足させられるストーリーになっているか、お話のクオリティを大今先生はどうやって見極めているのでしょうか?


「映画1本を観た満足感」を一つの指標にすることがあります。単行本2巻分で映画1本を観たときと同じくらいの読後感が欲しい、と思って、ストーリーを考えているんです。だから、1巻分の内容は体感時間として1時間、つまりコミックス全2巻で『2時間映画1本分の体験価値』を持たせようという感覚で、そこから逆算して一話分の内容を考えています。
 作ったネームを自分で見返して、「1時間なら面白いけど、2時間続いたらつまらないな」と感じた時は、尺を削るか、もしくは何か「おもしろ」を増やす必要があります。


――その、「おもしろ」というのは、一体何でしょうか?


 私の場合、一読者として読み返した時に、喜怒哀楽のどれか、つまり「ドラマ(感情の動き)」が感じられるかどうかですね。お話が筋書き通りに進むこと以上に、感情が大きく揺れ動く「振り幅」こそが、読者の心を動かす何よりの鍵になります。
 この感情の振り幅を描く上でも、私はよく映画を参考にします。2時間という決められた枠の中で、完成度の高いお話の構成を学ぶことができるからです。例えばアカデミー賞作品やいわゆる大作映画は、前提として非常に丁寧に作られていて、世間に評価されるポイントもハッキリしているのでドラマを学ぶ参考になります。

 

●極意2 キャラクター
他者への「いい事見つけ」をし、キャラに血を通わせよ!

――大今先生の描くキャラクターには、「本当にいそう」と感じるリアリティがあると思うのですが、どのようにキャラを作られているのでしょうか?


 キャラ作りの方法のごく一部ですが、自分が体験したことや、人から聞いた体験、偶然耳にした言葉、人と人とのやり取りを、後から思い出して、使えそうなものをノートに書き留めることをよくしています。
 ただ、聞こえた言葉や感情をそのままコピーして喋らせるわけではなく、キャラクターを動かす時は、「その人だったらどうするか」ということを、その人の気持ちになって徹底的に考え抜くことで、そのキャラクターはネーム上でどう動くのか、というのを決めています。その人がその状況に置かれた時、心の底からどんな感情が生まれ、出来事に対してどう動揺するのか――その人物の本音のリアクションを突き詰めていくんです。


――大今先生は、普段人のどのようなところにインスピレーションを受けるのでしょうか? 人間観察で心掛けていることはありますか?


 周囲の人に対して、「自分にはできないのに、どうしてこの人にはこういうことができるのだろうか」と尊敬の念を抱き、その人のいい事に気付くことがあります。
 創作にあたっては、そこからさらに一歩踏み込んで、その人の良いところや性格がどうやって形成されたのか、「この人がこうなったのは、こういう環境で育ったからではないか」というところまで関心を持つようにしています。 


――大今先生ご自身の体験や感覚をキャラクターに重ねることはありますか?


 自分自身の性格や感覚を、キャラクターと重ねることはよくあります。例えば『聲の形』の真柴の、当事者同士の問題に対して、部外者であるはずの自分が物事を勝手にジャッジしてしまうような部分。植野の、自分と合わない人間や自分のペースを乱してくる相手に対して、「私はこういう人が嫌い、距離を置いてほしい」と包み隠さず忌避感を出してしまうような部分ですね。すべてのキャラの立ち振る舞いや根っこにある感情は、私の中にある性格や感覚とリンクさせています。
 私は漫画の中に、テンプレ通りのキャラや、ただの背景のような記号的なモブを置くことがあまり得意ではないんです。だからこそ、描こうとしているキャラの立場になって徹底的に考えるのと同時に、自分自身の過去の記憶や感覚の中にも泥臭く潜って、しっくりくる感情の手応えを探すようにしています。そうして見つけた自分の中の生の感覚や本音が自然と重なっていくことで、噓のないリアリティや説得力みたいなものがキャラクターに宿ってくれるのかな、と思っています。

 

●極意3 創作との向き合い方
「物語を形にする快感」を胸に生き抜け!

――『聲の形』で新人漫画賞入選を受賞されたものの、デリケートなテーマを取り扱っているため当時掲載が見送られたという経験をなされたと思います。自分の作品を世に出すことができないという厳しい現実の後、大今先生はどのようにモチベーションを維持していたのでしょうか?


「自分の描きたいものを自由に表現する時期ではなく、技術を学ぶ訓練期間なんだ」と割り切って、頭を完全に切り替えていました。自分の作品を「世に出すことはできない」と言われた時期は、本当に精神的に過酷でした。うまくいかない悔しさや焦りを消せるわけではありません。だからこそ感情を殺して自分を「漫画を描くマシーン」にして、漫画を描き続けることで精神のバランスを保ち、その期間をやり過ごしていました。

⬆このシーンで語られる真柴の過去や価値観が、後の「映画制作」の崩壊や将也との関係性に大きな影響を与えていく。

 

⬆将也の転落事故直後、病院の敷地の外で植野が硝子を激しく攻撃する。硝子はその後、崩れた人間関係の修復へと踏み出していく。

 

――そうした過酷な日々を乗り越え、大今先生が諦めずに描き続けられた「一番の原動力」は何だったのでしょうか?


『聲の形』の連載準備をしていた頃に気づいたことなのですが、私にとって「物語を完成させて、ひとつの作品として仕上げること」自体がめちゃくちゃ気持ちいいんです。自分の手で漫画を完成させることの快感は、今でもまったく変わっていません。新人時代の話とは少し違うかもしれませんが、この「形にする気持ちよさ」は、新人の方にもどこか共感してもらえる感覚かもしれないですね。


――最後に、漫画家を目指す新人の皆さんへ、メッセージをお願いします。


 新人時代って、周囲の意見が絶対の正解に見えてしまって、「あの人はこう言っていたのに、別の人は逆のことを言う、どうすればいいんだろう」と混乱してしまうと思うんです。でも、周りの意見は決して大きな塊ではなく、あくまで一人一人の意見に過ぎません。自分の心に違和感がある時は、勇気を持って自分を貫いて良いのだと思います。
 新人時代に担当編集者から言われて、今でも自分を支えてくれている言葉があります。それは、「僕のアドバイスや意見に対して何か違うな、と思ったら、どんな形でもいいから、とにかく意思表示をしてほしい。『あー…』とか『うーん…』とか、うまく言葉にできなくてもいいから違和感や戸惑いを示していいんだよ」という言葉でした。
 もちろん、打ち合わせで編集者さんと意見が食い違ったり、関係性がうまく進まなかったりするのは、新人時代に一番多い悩みだと思います。これについては私自身も未だに「これが正解」と言える結論は持っていないので、教えてほしいくらいです。
 だからこそ、まずは自分が「物語を完成させることが気持ちいい」「描くのが楽しい」という感覚を信じて、そのピュアな原動力を一番大切にしてほしいなと思います。気負いすぎず、肩の力を抜きながら、長く創作活動を続けていっていただけたら嬉しいです。


――本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

第117回新人漫画大賞
特別審査員は『聲の形』『不滅のあなたへ』の大今良時先生!!

締め切りは2026年9月30日当日消印有効! ご応募お待ちしております!!

 

ぜひ周りの人にも教えてあげてください!

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