
新人漫画家さん必見!! 今回は、第115回新人漫画賞締め切り前特別企画として、漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」を大公開! 『灰仭巫覡』の大暮維人先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!
大ヒットベテラン作家が語る、漫画の作り方!!
『灰仭巫覡』大暮維人先生に聞く!
唯一無二の世界観を生み出す極意!!

週刊少年マガジンにて『灰仭巫覡』を大好評連載中の大暮維人先生に電撃取材! 大暮先生の漫画創作論をお聞きしました!
大暮維人先生Profile
宮崎県出身。1993年にホットミルク漫画大賞(白夜書房)で入選し、1995年に漫画家デビュー。以降、『天上天下』(ウルトラジャンプ)、『エア・ギア』(週刊少年マガジン)、『化物語』(原作:西尾維新/週刊少年マガジン)など、数々の人気作品を手がける。現在は、週刊少年マガジンにて『灰仭巫覡』を連載中。
●極意1
漫画の執筆が何よりも最優先!!
――1993年に他社の新人賞で入選され、漫画家デビューを果たされた大暮先生ですが、当時の生活について教えてください。
僕は二十代前半に会社員を辞め、漫画家になりましたが、すぐ専業の漫画家になれたわけではなく、デビュー当初は漫画の執筆とパチンコ、アルバイトで生計を立てていました。1か月のうち、大体10日で漫画を16枚書いて、残りはパチンコへ行ったりアルバイトをしたりする、といった生活を送っていました。
ただ、どうしても漫画が優先になってしまうので、原稿の締め切りが近づくとアルバイトをするのは難しくなってしまい、結果的にはパチプロ兼漫画家みたいになっていました(笑)。
パチンコも漫画も、時間を調整して取り組むことができる点が自分には合っていたと思います。
――新人時代の経験や練習の中で、今役に立っていることはありますか?
やりたかったわけではないけど、結果的に経験して良かったことは極貧時代の生活です。牛乳やうどんだけで数週間生活したり、病院送りになったりしたこともありました (笑)。普通の生活を送っていたらできなかったことを色々経験できたことは、今の漫画づくりにも役立っていると思います。
絵の練習は特にしていなくて、強いて言えば中学生くらいの頃からの適当な落書きがそれになるのかな。練習しても集中が続かないので、ぶっつけ本番で描いて、原稿を何回も描き直しましたね。デビュー当時はかなりのページを毎回毎回描き直していました。昔はアナログで描いていたので原稿が切り貼りとホワイトだらけでした(笑)。でも、そうして何度も描き直すことが結果的にスキルアップにも繫がったのかな、と感じています。
●極意2
ネタは本から集める!!
――週刊連載というタイトな締め切りに対して、どのような環境で執筆されているのでしょうか? アシスタントの方々の人数や1日のスケジュールを教えていただきたいです。
現在、アシスタントは5人体制です。
あんまり参考にならないと思うんですが、僕は、1日中ずーっと漫画を描いて、眠くなったら寝る、という、かなり不規則なスタイルで作業しています。仕事の時間帯は特に決めていなくて。朝寝る時もあれば夕方寝る時もあります。
若い時は、睡眠を小分けにしていました。時間を決めずに漫画を描いて、疲れたら2時間寝るというサイクルを繰り返していました。このやり方で生活すると、3回繰り返すだけで1日が3倍に増えたように感じるんですよ(笑)。一番のメリットは、作業が行き詰まった時や上手くいかない時に1回寝て、頭がすっきりした状態で再開できることです。ただこれは好きでやっているからできることなんだとは思います。
――現在、連載中の『灰仭巫覡』に関してお伺いします。執筆の際は、何か特別な道具など使われておられますか?
現在、原稿はパソコン1台で描いています。特別なものを使っているわけではありません。
強いて言うなら、「本」を重宝しています。本はすごいです。ネットで得られる情報は限定的ですし、多くの人の目に留まります。誰でも知っている情報を描いても仕方がないので、ちゃんとしたネタを集めるなら、今の時代でも本が一番だと思っています。
最近は、『灰仭巫覡』の執筆をしている関係上、どうしても神様関連の本を読むことが多いですね。
●極意3
原稿には付加価値をつける!!
――作品のクオリティを保つために何か意識をされていることはありますか?
原稿を終わらせることは大前提で、締め切りまでに「できるだけ付加価値をつける」ことを大切にしています。
付加価値というのは小ネタや、キャラクターの表情やしぐさ、全体的な空気感などのことを指します。
実際に原稿を描き終わって作品全体を俯瞰したとき、何か足りないなと感じたら、そこには絶対に直すべき要素があります。そういうとき、僕の場合は、作品に何を足せば一番面白いのかを考えて修正するようにしています。もちろん、原稿を一から描き直すこともあります。昔はそこで複数ページを描き直すのも当たり前でした。
現在でも、付加価値をつけるための期間は絶対に2日はとるようにしています。その時間をとることができなくなってしまったら、僕の場合、作品のクオリティを保てないので、もう連載自体出来ないと思います。
――え! 原稿を描き終えて、そこからさらに付加価値をつけるために2日とっていらっしゃるということですか?
描き終わってからというわけではなく、土台となる作業を終えてから2日間は必要ということなんです。週刊だと平行作業にしないと間に合わないので、おおよそそれくらいかなと。土台を終えた段階でも提出できなくもないのですが、自分の中では未完成なので。
時には原稿を2パターン作ることもあります。とある1ページが、作品の今後を決定する大きな分岐点になってしまうこともあるので、そういう時は予め原稿を2種類描いた上で、一度編集者に相談するようにしています。
週刊誌は、どこを妥協して原稿を完成させるか、というように「引き算」で考えるのが一般的ですし、これは真理です。でも、僕自体は、作品のどこに付加価値をつけるか、という「足し算」ベースで漫画を描いています。
ただ、いきなりこれを連載デビューしたての新人がやってしまうと大変なので、あまりお勧めはしません(笑)。
――36・37合併号の巻頭カラーイラストにも、先生の「足し算の工夫」が入っているそうですが…?
そうですね。あの絵に描かれているドラゴンの影は足し算です。最初に完成したときは、飛行機のデザインがもっと複雑なものになっていて、そこにドラゴンの影はありませんでした。
絵を描いている間に何か物足りなさを感じて、そもそもなんでキャラクターたちが空を見ているのかという疑問が湧きました。そこでドラゴンの影を足してみたんです。すると今度は、影があることによって飛行機の複雑さが邪魔になってしまったため、飛行機のデザインをシンプルにして仕上げたという感じです。
――『灰仭巫覡』の、伝統や宗教と、科学や近未来が融合する独特な世界観は、どのようにして生み出しているのでしょうか。
『灰仭巫覡』の世界観は、1970年代の終わり、僕が小学生の頃の地元の風景が元になっています。田舎でしたが、高度経済成長期だったということもあり、すごく活気がありました。しかし、その反面、すごく暗かったなとも思うんです。強い光が生む濃密な影の中に潜む得体の知れない何か…。とてつもない違和感がそこにはありました。
当時は今ほど技術が発達していませんでしたが、ソニーがウォークマンを発売したり、未来的な製品が台頭してきた時代で、古い田舎の風景と近未来的なテクノロジーが、ちょうど融合し始めていた頃だったんです。
僕が小学校へ行くときにいつも通っていた細い道があるのですが、両脇に映画館が建っているんですよ。どちらも単館で、両方とも女の人の裸のポスターが大きく貼り出されていました。そんな中を、小学生が列をなして歩いているんですよ。こんなこと、絶対に今じゃ考えられないですよね。
そういう昭和の光と影みたいな原風景が作品の世界観に反映されています。

▲作中の小ネタや、キャラクターの仕草や表情の機微が作品の魅力を高めている。

▲36・37合併号に掲載した巻頭カラーページ。大暮先生の「足し算」の工夫が詰まった一枚。

▲読者を惹きつける、近未来と、ノスタルジックな田園風景が混在した世界観。
●極意4
キャラクターの「感情」で編集者を黙らせる!!
――漫画を執筆されている中で、行き詰まってしまった時の乗り越え方があれば教えていただきたいです。
僕の場合、漫画を描いている中で、担当編集をいかに黙らせるか、という戦いが最も苦しく、行き詰まる瞬間です。でも、これは漫画家がやらなくてはいけないことでもあります。
黙らせると言うと少し激しく聞こえるかもしれませんが、 担当編集と長い付き合いがあり、信頼関係があるからこその言葉であって、僕に対して最も厳しい人間であるからこそ黙らせたいし、黙らせられた時にはいいものができると思っているんです。
基本的に僕ら漫画家は、編集者からヒントやインスピレーションをもらい、その上で、これだったら面白いだろうということをやり続けるしかないんです。全く違う価値観の人間を納得させるためには、たくさん考えないといけないのですが、これがとにかく大変ですね。
ただ自分の経験上、理屈を元にアドバイスをしてくる編集者に、こちらも理屈や構造で話をしたらダメなんです。そういう時は必ず、作品内のキャラクターの感情表現で返すようにしています。それでダメっていう編集者はいません。特に担当編集が複数人いる場合は、それぞれの価値観があって理屈だってみんなバラバラなので、全員が分かり合えることはなかなかありません。でも、感情っていうのは万国共通なので、僕はそちらに重点を置くようにしています。
●極意5
キャラクターは描きながら育てる!
――読者から特に求められるアクションシーンや個性的なキャラクターを作るとき、意識されていることはありますか?
アクションシーンに限らず、その漫画の「見せ場」ってあるじゃないですか。それは人気や売り上げにも関わってくるし、そこがしっかりできていないと、当然ながら読んでもらえなくなります。現代の漫画の場合、キャラクターやストーリーよりもこの「見せ場」は重要になってきていて、読者のニーズや時代を読まねばならないところだと感じています。
非常に難しいことですが、まずは自分の感性を信じて「自分が読みたいもの」を描く。その上で第三者の目、つまり担当編集の意見をしっかり聞く。ここで、担当編集を唸らせ黙らせられたら、その作品は間違いなく成功作になり得る可能性を持っているはずです。
また、キャラクターに関しては、最初はモブのような状態で登場させて、描きながらだんだん育てていくことが多いです。 最初からガチガチに設定を決め込んで履歴書みたいなものを作った上で描くと、僕の場合は型にはまったキャラクターになってしまいがちです。自分自身がキャラクターの成長や行動や楽しむことができなくなってしまうので、最初からこういうキャラクターだと決めつけることはしません。

▲迫力ある戦闘(儀式)シーン。
●極意6
自分に噓はつかず、目標達成のイメージを作っておく!!
――最後に、これから連載を目指す新人作家さんに向けてメッセージをお願いいたします。
「自分に嘘はつかずに、到達したい目標を明確にして、それを達成するイメージを作っておく」といいと思います。そうすると、迷うことがなくなります。
目先のデビューのために望まないものを描いても、その後ずっと描きたくないものばっかり描かなくてはいけなくなるかもしれません。それが巡り巡って良い経験になることもあります。
でも、自分の進みたい道を一番大切にするべきです。そのために、ちゃんとした目標を設定しておくことをお勧めします。
特に今の時代は、ヒットや流行りが目まぐるしく変わります。目先の誘惑や時代の流れに翻弄されることのないよう、自分の芯になる部分、なぜ漫画を描くのかという核の部分は絶対に忘れないことが大切なんじゃないかと思います。
――本日はありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました!
『灰仭巫覡』は週刊少年マガジンで大好評連載中!
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第115回新人漫画賞
特別審査員はマガポケにて『ガチアクタ』連載中の裏那圭先生!!

締め切りは2025年9月30日当日消印有効! ご応募お待ちしております!!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!